映画 『疑惑のチャンピオン』(☆☆☆)
リオオリンピックを前に、ロシア(=旧ソ連)のドーピング問題が、
同国の参加不承認につながる事態になっており、
今作はそういう意味では非常にタイムリーな作品。
自転車ロードレースなんてほとんど興味のないワシでも、
今作の主人公ランス・アームストロングと、
ミゲル・インデュライン(ウイポのスーパーホースの名前になってるせいでもあるんだが)
の名前ぐらいは知っている。
そんな、ロードレース界のビッグネームであるアームストロングが、
ガン克服前から手を染めていたドーピングの様々な手法と、
ドーピング検査逃れの手口を明かした報道記者の手記を基に、
アームストロングの栄光と破滅を描いた、言ってみれば「再現ドラマ」。
ガンになる前から有名だったフェラーリ医師(速そうな名前である)と、
ガン克服後蜜月の関係となり、
彼の手引きのもと「適正」に運動能力向上薬を用い、
ドーピング検査の手法を知り尽くした上でそれをすり抜ける方法を教授。
疑惑の目を向けられながらも、ツール・ド・フランス7連覇という偉業を成し遂げる。
しかし、このころ既にアームストロングは、
ズブズブのドーパー(ドーピング違反者)であり、
点滴や自家血液でドーピング成分を薄めて、検査逃れも常習化していた。
そのため、現役中は結局疑惑の目は向けられても引っかからずに過ごしてきたのだ。
フェラーリルートでドーピング問題が明るみに出るわけだが、
それまではマスコミですらも「シロ」だった時の名誉毀損問題を恐れて、
表立って批判することはなかったというのだから、
どこの国にも弱腰マスメディアはいるものなのだな、と思ったりしたわけだが…。
しかし、今作は結局「再現ドラマ」止まりなのである。
特段大きな山場も無く、なんと無く追い込まれてなんとなく終わっていく感じ。
丹念に描いていると言えば聞こえはいいが、
エンターテイメントとして見るとやはり物足りないわけである。
アームストロングの場合、ガン克服後速やかに身体能力を戻して、
現役に戻りたいというのももちろんあっただろう。
しかし、一度味をしめてしまうと簡単には抜けられない。
「勝利の美酒」には、そんな麻薬的効果があるのだろう。
結局、どの段階から締め上げていくのかが問題なんだろうが、
医療技術の進歩と不即不離の関係にもあるわけで、
フェラーリ医師のようなマッドサイエンティスト(と言っていいのかはわからんが)
の登場にも備えなければいけない以上、
人の育てた方などかなり踏み込んだ予防を考えざるをえないだろう。
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