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鑑賞映画レビュー 2021年11月分 他

モーリタニアン 黒塗りの記録(☆☆☆☆)
自国の法が及ばない外国に拘禁した上に、
刑を確定させるための裁判を行わない時点で、
国の側の「疚しさ」を端的に表現しているが、
裁判が行われない以上拘禁されている側に
対抗手段が無いのもまた確か。
そのためにも弁護士というのは存在しているとも言えそうだ。
今作は、いわゆる「9・11」にある形のケリを受けたい米国の、
むちゃぶりに巻き込まれた人々の話なわけだが、
「9・11」以降米国も「世界の警察」ではいられなくなった理由の
一端を垣間見ることができる作品。
一方、拘禁された男も、女性弁護士との出会いによって、
対抗手段が生まれ、今作の原作を作るに至ったわけだから、
実に「アメリカらしい」作品ともいえる。

そして、バトンは渡された(☆☆☆)
意図的に時系列をあいまいにしてるのが面白い作品。
ただ、基本的には「泣かせ」に来てる作品だし、
「世の中って、こんなに狭いもんかねぇ」とも思うが、出来自体は悪くない。
でも、多分原作の方が面白いんじゃないかなぁ…。

ザ・モール(☆☆☆☆)
卑近な言い方をすれば、
「出禁にされた店の内幕を暴くために人を雇って送り込む」話。
ただ、「出禁にされた店」っていうのが、あの北朝鮮なんだから、
一筋縄では行かない。
一方で、北朝鮮の意外な脇の甘さも垣間見えたり、
出禁にされた監督の中中に周到な潜入工作、
さらには潜り込まされた男の周辺など、
「クーリエ」とはまた少し違うテーストの緊張感が味わえる。

リスペクト(☆☆☆☆☆)
「ソウルの女王」とも言われる、アレサ・フランクリンの半生記。
札幌では今夏公開(年末年始再上映)の
「アメイジング・グレイス(アルバムと同名)」で描かれる
世界一売れたゴスペルアルバムの公開録音をクライマックスとしているので、
セットで観るのもおススメ。
良くも悪くも父親然としているアレサの父(フォレスト・ウィテカー)、
アレサが愛する「クソ旦那」(テッド・ホワイト)、
コーラスとしてアレサを支える姉妹
(セイコン・セングロー、ヘイリー・キルゴア)など、
脇役にも要注目である。

グレタ ひとりぼっちの挑戦(☆☆☆)
「シャアとグレタ、どっちの発言?」みたいのが
ネットに出るぐらい、発言が目を引く、
若き環境活動家グレタ・トゥーンベリの、
2018~2019ぐらいの活動を追うドキュメンタリー。
公開時期と前後して「COP26」も行われており、
タイムリーな内容ではあった。
まだ若いが、
「革命はいつもインテリが始めるが、
夢みたいな目標を持ってやるからいつも過激なことしかやらない」
(アムロ・レイ@逆シャア)が
良くも悪くもよく似合う活動ぶりである。
一方で、そろそろ「これでは道化だよ」(シャア・アズナブル@逆シャア)
とか言い出しかねないぐらい、
大人たちにその存在を大いに消費され、
「私たちは環境に考慮した活動を行っている」という
エクスキューズに利用されてるだけにも見えてくる。
「地球がもたん時が来ているのだ!」(シャア・アズナブル@逆シャア)
のはわかるが、結局何をやるにしてもエネルギーが必要なので、
逆シャア以降のガンダム作品が人類の粛清に走るように、
結局人を減らすしか解決方法がなくなってしまうのかも…。

偽りの隣人(☆☆☆☆)
ちょっと出来過ぎかな、とも思うが、
映画の中倉良いんじゃないかな、といった感じのユートピアな作品。
ぶっちゃけ、ここまで出来のいい政治家が
現代に出てくることはまず無いだろう。
お隣韓国は、今作のような出来事がわりと最近までまかり通っていた
(まぁ、20世紀の遺物というべきなんだろう)が、
内外のこの緊張感が現在の韓国の立ち位置を作り出しているともいえるだろう。
先日、光州事件当時の大統領だった全斗煥氏が亡くなった。
近過去を振り返る映画も少なくない韓国映画だが、
視点も面白いし力作揃いといった印象を持っている。
翻って日本は…、はぁ…。

すみッコぐらし 青い月夜のまほうのコ(☆☆☆)
こういうほっこり系のも、たまに見ます。
今作の場合、キャラクターが好きなので…。
前作より「良い話」に仕上げようとしてるのがちょっと気になるが、
息抜きにはちょうどいい、適度に力の抜けた作品ではある。

エターナルズ(☆☆☆)
「指バッチン」以前の作品は、初期の「マイティーソウ」とか
「ドクター・ストレンジ」ぐらいしか観てないが、
「指パッチン」以降は早くも2作目。
しっかし、「ティアマット」の名前が出た時点で
「この話どんだけデカくすんだ?」と思うぐらいの、
「全宇宙の秩序」をめぐる話になってしまうとか…。
「神は自らの形に似せて人を作った」って、こういうことなの?、とか、
「地球の命をすべて犠牲にして宇宙の新たな秩序の元となる者を生み出す」とか、
話がデカすぎて逆に萎えちゃうレベル。
しかも、「ブタがいた教室」じゃないけど、
当初から養分にするために育ててた地球に、
飼い主(エターナルズ)が情を移してしまった、っていうのが
今作のキモなわけでしょう?
要するに、ここまでおお事で語る必要のない話ともいえるわけで…。
今後は、「神に抗う人間」的な構図に発展するんだろうが、
正直あんまり興味が無いかなぁ…。
やっぱり「アベンジャーズ」路線、イマイチ好きになれませんわぁ…。

皮膚を売った男(☆☆☆)
チラシの「ストーリー」のところに
「大金と自由を手に入れる代わりに背中にタトゥーを施し
彼(主人公)自身が“アート作品”になる」
とあるが、「アート作品」になった時点で自由はないような気がするんだが…、
という冷静な判断が下せるのは、
おそらく今作を冷めた目で見ている観客ぐらいなものだろう。
主人公は、まずシリア難民である。
カネにも自由にも飢えているわけである。
そんな人間の目の前に、上記のような提案をされたら、
むしろ食いつかない方が不自然と言えるだろう。
そして、当然上記で懸念されているような出来事などが起こったりするわけだが、
それよりも主人公は「人間」であり「アート」なわけだから、
欲しい人が現れたり、競売にかけられたら、
内実はともかく外見は「人身売買」なわけだし、
ストレスがかかって作品に影響が出るできものができてもいけないわけで、
生きたままというのはいろいろと難しいところが…、
と思ったら着想を得たのが同様のアート作品からだっていうんだから、
世の中何があるかわからんものである。
「アートの価値」を考えるという意味では、
後述の「ダ・ヴィンチは誰に微笑む」の方が生々しいが、
社会問題に絡めているという意味では今作の方が広がりはある。

アイス・ロード(☆☆☆)
厳冬期に凍った湖の氷上に公式に道路が開かれる、
という事実が興味深い、アメリカ版「トラック野郎」。
それ以外は、安定の「リーアム・ニーソン」クオリティ。
単純に「タイムリミットサスペンス」として楽しむのが正解。

MONOS(☆☆☆)
舞台は不明、とされているが、スタッフを考えると
中南米を想定するしかないだろう。
ゲリラ組織(ただし攻撃対象は不明)に所属する少年兵団
(少女も含む)の話だが、リーダーもその少年少女から選ぶので、
破綻は目に見えてると思うんだが、案の定である。
組織から見込まれてたのか、人質を預かっていたり、
有力者から乳牛を預けられたりするんだが、
正直分別の無い子供たちに事の重大さなんてわからんと思うんだが…。
しかも、人質救出作戦も当然展開されてるから、
「敵」と対峙することにもなるだろうし、
人質本人だって逃げようとする。
かといって、リーダー候補を次々と失い、
お友達派閥だけで小さくまとまり始めたら、外敵と闘うのもままならない。
スペイン語で「猿」を表す「MONOS」という部隊のコードネームが
実に皮肉的ではある。

土竜の唄 Final(☆☆)
めでたく大団円なシリーズ第三作。
レギュラー陣はおおむねいつも通りだが、
今回のゲスト鈴木亮平は、もう少し仕事選んでもいいのでは…、
と思うが、まぁ主人公以外は基本かませ犬な話なので、
小物感が出てしまうのは仕方ないかなぁ…。
付き合い半分で観た作品なので、評価は当然低め。

聖地X(☆☆☆)
原作は一時期話題になっていたような気がするが未読。
思ったより小さい話だったなぁ…、というのが正直な感想。
韓国が舞台のようなので、こだわって韓国で撮ったというのは好印象
(ムーダンを陰陽師とかに置き換えれば日本でも撮れそうだが、
それをやっちゃうと露骨な予算カットって言われそう)。
ワシ的にはわりと早い時点で
「ドッペルゲンガーではなく「神様とピッコロ(@ドラゴンボール)」」
的な構図であることは理解できた。
一緒になった時に「記憶が飽和する」というのは面白いが、
実際に大量に飽和した時どうなるかも見てみたかったかな。
推論だけであそこまでやらせてしまうのもどうかと思うが、
そもそも科学で説明がつかない事象なので、
推論で解決法を模索するしかないのも事実。
ただ、すごく面白いか、と言われるとなぁ…。

ダ・ヴィンチは誰に微笑む(☆☆☆☆)
今や、大量生産品でさえ「ストーリー」無しにはなかなか売れない時代。
アート界では2017年に突然現れた「ダヴィンチ最後の絵画」に
510億円というとんでもない値段がついた。
その真贋もさることながら、ゲリラ的に英ナショナルミュージアムに展示
(510億円がつく前に)されたり、そんな大金を出した主は誰か、
などいろいろ謎だらけ。
アートの真贋の決定者や、価格決定者が実は難しい。
ある意味、権威が数人飛びついたら、
どんな作品でも高値がついてしまうのが
アートの世界と言ってもいいのではないだろうか。
でも、そうなると、実に投機的な業界と言えるし、
作者の方にとっても気が気じゃない業界と言える。
「聖地X」の何十倍も怖い話。

1941 モスクワ攻防戦80年目の真実(☆☆☆)
史実の話としては、冬将軍が来なかったら
ソヴィエトはマジでやばかった、っていう話
(朝鮮戦争のときの韓国軍は開戦数か月でこの状況なんだが)。
映画としては、「死亡フラグが冒頭からビンビン立つ」作品。
ドイツ側を全くと言っていいぐらい描いてないのが物足りないが、
ロシア映画な時点で視点としては新しい部類なのでむしろすがすがしい。
戦争ものが好きな人にはオススメ。

モスル(☆☆☆)
「1941~」に比べると小規模だが現代的な戦争もの。
警官らしく「SWAT」を名乗ってはいるが、
警察組織からも実質追われる身になっているのは、
彼らが内包する「真の目的」が私的なものであるからかもしれない。
入隊条件も「経験」より「身内をISに殺されたかどうか」にあることも、
上記の「私的な目的」と関係してくるわけだが、
今作の主人公は「SWAT」に新規入隊した男(アダム・ベッサ)であり、
彼の成長物語も一つ見もの。

信虎(☆☆☆)
まず、冒頭で徳川綱吉と柳沢吉保が出てくることに驚くが、
吉保のもとをたどると甲斐武田の家臣の血脈に至るというのを
知らなかったので興味深かった。
その柳沢家がどうやらどこかから武田一族の者を探し出して、
冒頭のようにお家再興を成し遂げた、というのも初見で興味深かった。
以降は吉保が自分の息子になぜか武田信虎のことを語ってやる、
というのが今作の本編。
時代劇としては悪くないが、ところどころ作り込みが甘い。
合戦としての見せ場はほぼ皆無だし、
物語が1572年ぐらいから始まるのに、
信虎の元をいつまでも離れない「義元左文字」。
それに、信虎は怪しげな術を使う設定だし、
息子信玄が神格化されてるのに対抗しようとでもしてるのかしら?
キャストとか見てもそれなりにカネをかっけてるっぽいが、
肝心のストーリーにツッコミどころが少なくないのはいただけない。

サウンド・オブ・メタル(☆☆☆☆)
急に自分が聴力を失ったら。
まして、自分がミュージシャンだったら。
その喪失感は半端なものではないだろう。
今作の主人公ルーベン(リズ・アーメッド)は、
上記の上にミュージシャンであることが
現実社会と正しく繋がる上で必要不可欠な要素だったことを考えると、
聴力を失うことによって多くのものを失うことになってしまう。
一度は恋人でありバンドメンバーでもあるルー(オリヴィア・クック)によって
難聴者のコミュニティに送り込まれるが、
難聴者のみで構成されているコミュニティなので、
健常者であるルーとは別れて暮らさなければならない。
この喪失の大きさを受け入れられないルーベンは、
大金のかかる聴力回復手術に臨むのだが…。
難聴や、聴力回復後の、音による描写が秀逸で、
家で視聴する際にはヘッドホン使用がおススメかも。
難聴者コミュニティの閉鎖性は気になったが、
今作のイメージでは「異国」っていうイメージに近かったし、
「殺人鬼から逃げる夜」を観た時の
「健常者に最適化された実社会」を考えると仕方ないのかも。
ラストはあいまい路線だが、吹っ切れた感じなのは
悪くない傾向と見るが、どうか。


12月を残して、2021年の鑑賞本数は193本。
2年ぶりの200本越えはほぼ確実だろう。
「勝手に映画賞」最高賞は、
邦画ヤクザ勢と洋画の中では孤軍奮闘の「リスペクト」の
戦いといったところになりそう。
最低賞は、メジャーどころでそこまでひどい作品が少ないからなぁ…。
マイナーな作品推しても面白くないので、
現状では「CUBE」辺りが有力かな。

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