鑑賞映画レビュー 2021年12月分
あけましておめでとうございます。
一年の計をはかる前に、まずは前年の積み残しを片付けることとします。
ドーナツキング(☆☆☆☆)
移民の国アメリカらしい、成功と挫折の話。
こういうのを観ると、なるほど「ギャンブルって怖い」わけだが、
長年ギャンブルに手を出しているワシなので、
急に大金を手に入れるとフツーの人は持て余す、って話でもある。
そういう意味では前澤友作氏は、
良くも悪くもお金を使い慣れてる人なんだな、と感心してしまう。
それにしても、アメリカのドーナツのけばけばしさよ。
ワシなんかは逆に食欲が失せる色合いなわけだが…。
ナチス・バスターズ(☆☆☆)
大規模な戦いを描いた「1941」と対をなす、
「コンバット!」的な作品。
「1941」が国威発揚的内容でちょっとイマイチだったんだが、
今作はいろいろと仕掛けがあって面白い。
「レッド・ゴースト」なる存在がカギになる一方、実際の活躍は…。
まぁ、こういう描き方の方がゴーストっぽくはあるわけだが…。
ファイター 北からの挑戦者(☆☆☆)
北朝鮮で兵役経験のある脱北者女性が韓国でボクシングに挑む、という作品。
トレーナーの描き方などに若干クセがあるが、
わりと正統派なボクシングもの。
気になったのは、韓国には「脱北者コミュニティ」みたいなものが
無いのかなぁ、という点。
もちろん、脱北者が寄り集まることのデメリットもあるだろうが、
やはり韓国政府としては「北朝鮮スパイの温床になる」から
脱北者は分離して監視下に置いておいた方が国家としては安全、
と考えてるんだろうか。
ただ、それはそれで、今作のようなセクハラまがいの事象や、
他の作品でも描かれているように生活苦を抱えているわけで、
韓国も「自助」「共助」重視ということなんだろうかねぇ…。
悪なき殺人(☆☆☆)
偶然が連鎖して、最後は一つの円になる、という話。
冒頭のシーンで面食らうが、
「世界は広くて狭い」という、イマドキな話を端的に示しているし、
「なりすまし」など含めサイバー犯罪も盛り込んでくる辺り、
イマドキな話に仕上がってる。
ただ、タイトルに偽り有り、だとは思う。特に農夫のミシェル。
ボストン市庁舎(☆☆☆)
4時間超という超長編ドキュメンタリー。
「市庁舎」とは言っても、各州が実質独立国家なアメリカの、
大都市(人口63万だから千葉県船橋市ぐらい)なので、
意外と権限がある感じの印象。
まず、実に存在感のある市長さん。
いろんなところにとにかく顔を出す。
もちろん、顔を出すだけでなく、対話や討論を欠かさない。
格差是正や多様化にも真摯に対応してるし、
市民生活にも介入すべきところにはしっかり介入する。
これらは、政府(今作の場合市庁)に信用があるからであり、
また財政的裏付けもあるからだろうと思う
(財政的な話が無かったのが、今作の不満点ではあるが…)。
時間が長いから、あまり人にお勧めはしないけど、
「こういう人たちが社会の仕組みを支えてる」ことがよく分かる映画ではある。
クナシリ(☆☆☆)
日本から見れば「火事場泥棒された」北方領土のうち、
国後島について旧ソ連ベラルーシ出身の監督さんが撮ったドキュメンタリー。
歳入規模が日本とそんなに変わらないロシアが、
日本の45倍の国土を有してるのだから、
隅々までカネが回らないのは当然ではあるが、
戦前の日本は国際ルールがあんまりわかってないし、
今でもルールくそくらえと思ってる日本国民が少なくないところから見ても、
北方領土について情緒的な論議を仕掛けても勝てないだろうから、
正直とっとと諦めて、国交を樹立して、堂々と外資として入り込むべきだと思う。
もっとも、日本企業にとって、投資価値があるかと言われると、
それはそれで疑問が残るわけだが…。
軍艦少年(☆☆)
軍艦島を舞台とする、漫画原作の映画。
軍艦島で獲ろうと思うと映画にするしかないのかもしれないが、
内容的にはスクリーンサイズではない。
まぁ、悪くない作品ではあるが、強く推せる内容でもない。
私はいったい、何と闘っているのか?(☆☆☆)
すっかりクセモノ俳優として定着した、我らが安田顕主演作。
タイトルに対して、ワシなら
「能力を超えた野心とつまらん自意識」と戦ってると返す。
安田顕演じる主人公は、能吏ではあるが人をうまく使えるタイプではない、
言ってみれば菅義偉タイプ。
原作者(つぶやきシロー)から推察するに、
今作はむしろ後者の「つまらん自意識」をフィーチャーしてるのだろうが、
そういう小心ぶりも「能吏止まり」な印象を強化する要因になっている。
定食屋の女将に「大丈夫だ」なんて言われなくても、
自分で「大丈夫だ」って思えるようにならないと、人の上になんか立てないよ。
まぁ、日本人はこういう不器用な人が好きなんだろうけどね。
茲山魚譜(チャサンオボ)(☆☆☆☆)
1994年のドラマ「お金がない!」みたいな話だが、
視点が逆に近く、黒山島の漁師昌大(ピョン・ヨハン)が
織田裕二演じる主人公の立ち位置。
キリスト教をテコにして、史劇の中で現代的な命題に取り組んでいる、
という意味では面白い試みで、
そこは時代性を無視して好評を得た「必殺仕事人」的ともいえる
(今の「必殺仕事人」はむしろ保守的で面白みに欠ける)。
もっとも、現代は丁若銓(ソル・ギョング)みたいなカネにならない研究に
血道を上げる研究者がのうのうと研究できるほど社会に包容力が無いからねぇ…。
189(☆☆☆)
まず言いたいのは、厚労省はこういう映画を推薦する前に
今作のような現実と真摯に向き合い、
自ら実践すべきである、ということである。
もう一つ言いたいのは、新型コロナ問題と今作の根は同じで、
「施設の収容能力」問題に収斂されてしまう、ということである。
施設自体のハードウェア問題だけでなく、
施設従業員(病院の場合医師よりも看護師)の
量的質的不足というソフトウェアの問題も出てくる。
作中で「そうして問題があるのがわかっていたのに親元に子供を返すんですか?」
といった話が出てくるが、
じゃあ「返したら危ない」からといって施設に留置し続けたら、
今度は施設側が「収容能力が足りなくて施設内でいじめ問題が発生」とか
そういう問題が発生する危険性もあるし、
留置者が増えて職場がブラック化したら、
更なる人手不足の引き金になりかねないわけである。
こういう話を地上波ドラマとかでできてない時点で、
この国のメディアはいろいろと問題がある、といえる。
最強殺し屋伝説 国岡-完全版-(☆)
フェイクドキュメンタリーだが、いかにも完成度が低い。
このご時世、そこら中に防犯カメラがあるのに、
ガン無視して人殺しをするなんて、プロ意識低すぎない?
肝心のアクションシーンも一本調子だし、
アメリカのDVDスルーされたC級アクション映画の方がまだまし。
ダーク・ウォーターズ 巨大企業が恐れた男(☆☆☆☆)
「MINAMATA」的な作品だが、
自国の問題に自国で向き合っている、という意味で完全に勝利。
モデルになった弁護士さんは、今も今作の法廷闘争を戦ってるそうな。
地元民から白い目で見られるという点も「MINAMATA」的だが、
そこで屈しない所は国民性の違いか、それとも弁護士が外部者だからか…。
本来企業をこういったクレームから守るための弁護士だった人が、
縁故で請け負った話から逆の立場になってしまうというところも興味深いし、
奥さんも紆余曲折ありながらも主人公に寄り添う態度には、
観るべきところがある。
今作があれば、米国は「MINAMATA」なんか上映する必要ないわなぁ。
マトリックス レザレクションズ(☆☆☆☆)
今までの三部作を観ていれば、思わずクスリとくる
「メタな話」がいろいろ出てくるが、
基本的に「MMORPG」だと思ってたワシ的には
「なんだ、半分正解だったじゃん」的な話。
死んだはずのネオ(キアヌ・リーヴス)とトリニティ(キャリー=アン・モス)が
生きている理由も、この世界のエネルギー源が何であるかを考えると
まぁ納得がいく。
そして、「神話って実はこうやって生まれてきたのではないか」
と思わせる内容で、そういう意味でも興味深い感じに仕上がっている。
もっとも、前作の主要キャラクターは全員生きてるんだけど、
まぁ大人の都合をいろいろといじくってるという意味でも面白く仕上がっている。
ただ悪より救いたまえ(☆☆☆)
世界に発信する、という意味では分かりやすさに振っていて
見ごたえはあるのだが、
今年は国産ヤクザ映画大豊作の年なので、
ちょっと荒唐無稽が過ぎる感はある。
ただ、多様性をうまく取り入れているので、
世界相手の訴求力という意味ではやはり今作に軍配が上がる。
韓国映画界は、自分の強みというものがよく分かってる。
キングスマン ファースト・エージェント(☆☆☆☆)
今までがやや荒唐無稽気味だったが、
歴史を取り入れてる分落ち着いて、
かつ示唆のある作品に生まれ変わった印象。
英国の植民地支配に否定的視線を向けたり、
愛国青年である息子コンラッド(ハリス・ディキンソン)に
戦争は良くないと説く父オックスフォード公(レイフ・ファインズ)。
だったら「キングスマン」をもっと早く設立して、
息子を誘えばよかったのにね。
敵側組織がバランス志向(=世の中を灰色に保つ)、
と書けば聞こえはいいが、要はマッチポンプなので、
先の展開はもう見えてしまってる。
続編作る気マンマンみたいだけどね…。
アメイジング・グレイス アレサ・フランクリン(☆☆☆☆☆)
一度夏ごろに札幌で公開されていたのだが、
都合が合わず観れなかった作品。
「リスペクト」公開で改めて観たくなったところに、
再上映されると聞いて観てきました。
「リスペクト」のラストシーンから始まる話なので、
実質「リスペクト」を完成させるラストピースといってもいい作品。
興行元の都合(「リスペクト」はユニバーサル、今作の権利はワーナー)で
今作のシーンが使えなかったため、ああいうラストになった
可能性もあるので、「リスペクト」を観た方には絶対おすすめな
アレサ・フランクリン自身による圧巻のパフォーマンス。
また、MCと収録の指揮を執った牧師さんのMCぶりにも注目!
DAU.退行(☆☆)
上映時間6時間超という超大作…、
いや、ただ撮った映像を持て余してるだけの作品。
共産主義の未来予測など、観るべきシーンも無くはなかったが、
長いわりにテーマへのフォーカスが甘く、
ラストの凶行が思想教育による成果なのか、
人体実験によるものなのかわからない。
編集って大事、ということがよく分かる作品。
今日中に、「2021勝手に映画祭」で2021年の映画のまとめを上げます。
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