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鑑賞映画レビュー 2022年3月分 他

遺言 原発さえなければ(☆☆☆)
東日本大震災で放射能の実害を受けた各地の農家や酪農家の、
地震発生から3年間を追ったドキュメンタリー。
あえて「実害」と書いたのは、作中でもたびたび触れられるが、
放射能汚染が尋常ではないレベルの数値をたたき出しているからであり、
その後の除染時に出た汚染土を積み上げているのが農地だったりするせいで、
物理的に農業を再開できなかったりする事情による。
今作では最終章である第6章以外の5章で構成。
クライマックスは、そのうちの数人が自殺してしまうところなんだけど、
その理由が「長生きしすぎた」とか
「奥さんがフィリピン人で、この苦境にそばにいてくれない」とか…。
当初からワシも思っていたが、
日本の田舎が震災前から抱えていた問題がフレームアップされただけなんだよね…。
まぁ、ほんとにやばいのは「第6章 サマショール」なので、その辺りはまた後で。

永遠の矢(トワノアイ)(☆☆☆☆)
アイヌもの。ココは箇条書き。
・今でこそわりとアイヌであることを明かしてる人は増えたが、
 本州における部落差別と同じで明かせない時代があったことを改めて思い知らされる
・ただ、そのことが混血と融和を進めてしまい、
 民族としての自立性を大きく弱めることにも…
・今作の書き方を見ると、ウポポイPRアンバサダーを務めているとはいえ、
 宇梶剛士氏はいろいろ飲み込んでそのお仕事やってるように思われ…

The Batman(☆☆☆☆)
話題作「JOKER」から続く、新たな「バットマン」シリーズの本命。
今作では、表の顔と裏の顔を使い分けて「名探偵」ぶりを発揮するが、
結局警察ができないような強引な捜査をするので、
まぁそういうところがらしさといえばらしさか。
格差社会の両端がそろったことで、より現代的になった今シリーズの、
今後の展開に期待である。

アンネ・フランクと旅する日記(☆☆☆)
結構な感じでこすられてきた「アンネの日記」を、
ファンタジックに味付けしたアニメ作品。
日記自体の構成や成り立ちについて深く知ることはできたが、
テーマがイマイチぼやけてるように思えた。
いろいろ印象に残りにくい作品ではある。

サマショール~遺言 第6章~(☆☆☆☆)
先述した「遺言」の最終章。
同じように放射能汚染で集団避難させられたチェルノブイリ周辺の
廃墟化した集落に行ったりするのが結構タイムリーだったりするんだけど、
今作を通じて日本人の行動原理の一端を知ることができたのは大きい。
田んぼは、水源を高いところから低いところに流す間に作る。
その水流を共有するので、
水路の途中にある田んぼだけが耕作をやめるわけにいかない。
だから、本来共同体の中で足並みを崩すことは許されないのである。
崩したところで水流が滞るからである。
ところが、「あの震災」でその途中の耕作地の持ち主が
物理的に耕作できなくなってしまった時、
その共同体は米作りを続けるために残った人々の負担が増えてしまう。
そうでなくても高齢化が進んでいるのに、である。
「あの震災」が福島に与えたダメージは、計り知れないものである、ということ。

ガンパウダー・ミルクシェイク(☆☆☆)
悪い言い方をすると「別に男がやっても同じこと」なんだが、
世界観とかに説得力があるので、
「男VS女」的構図がフレームアップされてくる。
クライマックスのアクションシーンはなるほど圧巻だし、
男女差を埋めるためのツールとしての銃器の使い方も面白いのだが、
マッドドッグ先生(By「ザ・レイド」)とかの信者であるワシにすると、
ガンアクションはやはり「物足りない」と感じられるわけで…。

テレビで会えない芸人(☆☆☆☆)
テレビをつまらなくしてるのは、コンテンツを作ってる
テレビ局であり制作会社であり、
それを見る我々視聴者でもある。
共通するキーワードは「クレーム」と「視聴率」である。
一部ノイジーマイノリティとなった視聴者が、
テレビ局が対応できないほどのクレームを入れてしまうような番組は
即打ち切りである。
そういう面倒をあらかじめ回避するような番組作りになるのは、
人的資源が決して豊富でないテレビ局としては当然の話である。
一方、本来なら視聴者サイドは「気に入らないなら見なければいい」
だけの話なのだが、そうなると視聴率が全体的に下がってしまうので、
テレビ局としては死活問題なのである。
ゆえに、「イヤなら見るな」とか言ってしまう出演者は嫌われるし、
流し見でもいいからとにかく見てもらうための
「画作り」や「テーマ選び」に終始することになる。
それが今のテレビ業界、と言えるのではないだろうか。
閑話休題。
永六輔や立川談志が認めた、「テレビで会えない芸人」松元ヒロ。
ウーマンラッシュアワー村本の例を引くまでもなく、
扱いにくい政治ネタで毒を吐いてるわけだが、
本当に面白いのは奥さんの方かも…。
あと、「憲法くん」に関しては、にわかには賛成できないかな…。

ベルファスト(☆☆☆☆)
ノリ自体は「三丁目の夕日」っぽくはあるが、
1960年代の北アイルランドが舞台なので、いろいろ物騒。
で、ここでも思い出したのは福島の話。
「冬に出稼ぎしなくてもいいように」ということと、
「炭鉱をやめて都市がしぼんでしまうのを防ぐため」に、
福島第一原発は作られた、と聞いている。
今作でも主人公の父親が出稼ぎをしているが、
北アイルランドは情勢もあって出稼ぎしなくて済むように
仕事を用意してやれない。
しかし、原発を作った福島も結局共同体が崩壊した。
滅びるべきは滅びるのではないだろうか。
ほろ苦い作品。

ヴォイジャー(☆☆)
このプロジェクトを考えたのは、
おそらく理系の博士だけで、
しかも歴史や哲学について何も学んでなかったのではないだろうか。
純粋培養してもたいがいろくなことは無いんだが、
隠し事はするわ、代償無しに命を懸けさせるわ…。
開始数分で「うまくいくわけがない」と観客に思わせてるようでは、
すでに失敗だと思うのだが…。
そして、宇宙船内で起こる、「やっぱりな」なイベントの数々。
それでいて、いざ対象の惑星についたら、侵略する気満々なんだから、
最初から牙を抜いてどうすんだ、って話にもなるわけで…。
まぁ、「マクロス」シリーズも移住に成功してる描写は
確か無かったと思うし、惑星移住は現実として描くのが難しいテーマ、
と言えるのではないだろうか…。

オーストリアからオーストラリアへ(☆☆)
「電波少年」や「水曜どうでしょう」を観ていた身からすると、
ガチで水不足になったり病院にかからないといけなくなるような大けが以外、
だいたい鑑賞済みのイベントしか起きないので、
ところどころで見せるドローン映像以外に、
ある意味観るべきところがない。
必要なカネだいたい持って歩いてるから、だいたいカネで解決しちゃうし、
自転車という、ある意味燃料のいらないツールを使ってるので、
補給に気をかける必要性も少ない(だからガチの水不足になるんだが…)。
ルートを見ても、オーストラリア行きの船に乗ったらほぼ終わりの旅なので、
後半は確実にダレる。

アンビュランス(☆☆☆☆)
マイケル・ベイらしさ全開のハイスピードアクション映画。
その分映像は散らかってる印象だが、
救急救命士キャム(エイザ・ゴンザレス)がマジでカッコイイし、
逃走に使う救急車の中でいろんなことが起こる、
見ごたえ満点の映画に仕上がってる。
物語のトリガーとしての銃の使い方も効果的で良い。

ナイトメア・アリー(☆☆☆)
物語の作り方としては面白い作品。
基本的には「身の程を知れ」的な作品であり、
「笑ゥせぇるすまん」的な皮肉のこもった作品とも言える。
イマドキ「見世物小屋」がわかる人がそんなに多いのか?
という疑問はあるが、手品にしろ見世物小屋にしろ、
物事にはしばしばウラがある、ということを示す
ある意味シンボル的な役割として、今作では機能している。

ミラクルシティ コザ(☆☆☆☆☆)
不覚にも泣いてしまった。
沖縄返還から50年経つが、
沖縄と日本、あるいは沖縄とアメリカの関係性を考える上で、
いろいろと示唆に富む作品。
あまりタイムリープものは好きじゃないのだが、
今作は「過去を変えるため」ではなく「未来とつながりなおすため」
だし、ラストにきっちり繋いでくるのも良い。
ただ、現実はこんなにうまくはいかないんだが、
スクリーンの中ぐらい、こんな良い夢を見させてほしいよね、確かに。

最後に2022年のアカデミー賞について。
・結局ウィル・スミスの話しか印象に残ってないが、
 「ドリームプラン」自体は良い作品。
 でも、ウィル・スミスはもう少しリチャードさんから学ぶべきところがあったかも…。
・「コーダ あいのうた」の作品賞受賞は
 ハリウッド映画界のある意味での無節操さの象徴と言えなくもない。
 ただ、「脚色賞」も受賞してるのは、やはりお兄さんの設定の妙ゆえだろう。
・「ドライブ・マイ・カー」は、「コーダ~」とかと比べてしまうと、
 やっぱり「フツーの人」しか出てない、という意味でインパクトが弱かったっぽい?

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