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鑑賞映画レビュー 2022年6月分

フォーエバー・パージ(☆☆)
こういうお話は、ちゃんとルールがあるから面白いんであって、
いくら前作以上の刺激を追求するためとはいえ、
実質ノールールにしてしまったら、ただの殺し合いでしかないし、
その醜悪さたるや…。
ゆえに救済措置として「タイムリミット」を設けて
無法地帯からの脱出を 目的とするわけだが…。
それは、もう「パージ」でも何でもない、
よくあるタイムリミットサスペンスでしかない。

わが青春つきるとも(☆☆☆)
無産政党の政治運動に身を投じ、
治安維持法で検挙され、獄中死した伊藤千代子の伝記映画。
予算の関係か少々アラの見える作品ではあるが、
こういう埋もれた人物を発掘するのは、
ある意味映画の使命であり、醍醐味であると思う。
各地の上映会はなかなか好評なようなので、
長く語り継がれる映画に育っていって欲しい、とは思う。

ドンバス(☆☆☆)
2014年にウクライナから一方的に独立したドンバス地方で、
それ以降に起こった出来事をもとに構成された
13のショートストーリーのオムニバス的作品。
フェイクニュースやプロパガンダといった虚実が入り乱れた
情報の洪水の中で、それに振り回されながらも生きていく
庶民の生きざまを活写している。
現在は、当時よりさらに状況は混迷していそうだが、
世界情勢含め今後どうなっていくことやら…。

機動戦士ガンダム ククルス・ドアンの島(☆☆☆☆)
ファーストガンダムにも携わった安彦良和氏が監督をやってるためか、
どこか懐かしさを感じさせる「最新のガンダム作品」。
そして、そこはかとなく漂う「富野イズム」。
一方で、マクベとゴップというジオン&連邦の高級幕僚の間で
話される内容がイマドキ過ぎて逆に笑えない。
このあたりのバランスが絶妙だし、見ごたえもしっかりある。

東京2020オリンピック SIDE:A(☆☆☆)
オリンピックのオフィシャル映画としては正統派の方。
今回新採用の競技以外はほぼすべて女子種目をフィーチャーしてるのは、
やっぱり監督が女性だから?
でも、日本てこういうのすぐに全力で消費しちゃうから、
そこまで目新しい話が出てくるわけでもないし、
むしろ後日上映の「SIDE:B」的な話が随所に登場。
まぁ…、避けられないよねぇ…。

オフィサー・アンド・スパイ(☆☆☆)
日本でいえば「森友問題」みたいな話だが、
そこは元ネタが19世紀末のフランス。
軍部内の問題で、その上人種問題も絡んで
事態はさらにややこしいことになっている。
解決まで実際には12年もかかっているが、
最終的には自浄作用が働いているのが救いではある。
翻って日本である。
いまだに自浄作用が全く働かず、すっかり逃げおおせてしまった。
こういう「不法」を働くヤツらに対抗するには、
ある意味「無法」を働くしかないわけだが…。

ワン・セカンド 永遠の24フレーム(☆☆☆)
最近は大作を作らされてずっこけてる感のあるチャン・イーモウ監督。
しかし、今作は大作とは言えないがほっこりさせてくれる佳作。
田舎って、日本もそうだけど娯楽なんて本当に少ないわけである。
今作のように娯楽を運んでくれる存在は、なるほど貴重なわけである。
今や配信で向こうからやってくる時代になったが、
現在だって「鑑賞」という体験自体の貴重さは失われていないと思う。
そういうことを改めて思い出させてくれる作品ではある。

チロンヌプカムイイオマンテ(☆☆☆)
1986年に屈斜路湖畔で行われた「キタキツネの霊送り(タイトルの邦訳)」の
模様を、現在のロケ地の模様を含めて追っていくドキュメンタリー。
相変わらずアイヌの文脈がいまいち理解できないのだが、
「首輪でつながれたキツネ」が「霊送り」を経て
「人間の世界は素晴らしい。みんなも行ってごらんよ」と
果たして誘うものなんだろうか…。
映像としては貴重だが、
この映像以降にアイヌから失われたものも少なくないだろうし、
祭祀の継承も今作のような映像無しには難しいだろう。
時代の風雪に、これ以上耐えられるのだろうか…。

バスカヴィル家の犬(☆☆)
チラシで「ホームズシリーズ最高傑作」と言われる原作を、
日本を舞台に再構成された今作。
でも、瀬戸内海の島を舞台にしてしまったことから、決定的な矛盾が発生。
傑作を映像化するんだから、
そういう細かい部分こそ丁寧に扱うべきなんじゃないだろうか…。
展開は確かにテンポよく進むが、悪く言うと端折ってると取られるかも…。

PLAN75(☆☆☆)
実行されたら国内で物議をかもすこと間違い無しの、
「満75歳から精子の選択権を与える制度」をテーマにした作品。
序盤の内容を見ると明治初期に行われた「秩禄処分」
(華族や士族に明治新政府が払っていた給与を差し止め、
代わりに一時金を払って事実上放逐したこと)を思わせるものがあるが、
その辺りの細かい制度設計が全く語られてないので、
ただ「最後の選択に向けた薄っぺらいドラマ」に落ち着いてしまった。
「生きることの意味」を問うには少々情緒的に過ぎる内容に思われた。

エリザベス 女王陛下の微笑み(☆☆☆)
今年在位70年を迎えるエリザベス2世の、初の長編ドキュメンタリー。
内容は、ある意味タイトル通り
「今までのアーカイブから女王の笑顔だけを切り出してくる」
ような内容。
彼女の気さくさは確かに伝わってくるが、
少々深掘りが足りないかな…。

峠 最後のサムライ(☆☆☆)
新潟で予習済み。
「ガトリング家老」とも言われる「知られざる英雄」
河井継之助の、最後の1年を追う作品。
まず、彼をちゃんと押さえてた「維新の嵐」の慧眼、
というか、シブサワコウは司馬遼太郎大好きなんだなぁ…、
と改めて思う。
「5万vs690」は確かに圧巻だが、
「300」とかも見てるし、「寡をもって多を制す」る、
兵法の邪道をことさら称賛するのはあまり良くないし、
むしろ抵抗の象徴として城というハードウェアに
こだわらざるを得ない状況を作ったのは、
戦略上の失敗だった可能性さえある。
しかも相手は話が通じない、功を焦る新政府軍。
河井の交渉力でも歯が立たず。
スイスを目指すなら、自国に戦略的価値を持たせ、
かつ長期戦に耐えられる兵力を持つ必要がある。
それがないと「蟷螂之斧」という結末にしかならない。
この国は、こういう教訓から何も学ばないのである。ザンネン!

ムクウェゲ(☆☆☆)
2018年にノーベル平和賞を受賞した医師、
デニ・ムクウェゲのドキュメンタリー。
内戦状態にあるコンゴで、「恐怖を植え付けるため」に
レイプされる女性たちを20年以上診察しているお医者さんだそうで、
ところ変わればいろんな物事の意味付けが変わってくるものなのだな、
ということをまず改めて知った。
そういう事情ゆえに、レイプされた後に受ける心の傷の質が、
日本国内とかで報道されたものとは全然違うようなので、
そういう患者さんに寄り添うのは並大抵なことでないことも理解できた。
そんな彼の思想の根底には、
日本で学んだ「利他」の思想がある、というのはまた興味深い。
「もったいない」のワンガリ・マータイも
ノーベル平和賞受賞者(2004)でありアフリカ人である。
チャイナマネーが大量に入り込んでいるが、
一方で雇用をアフリカに落としてないから評判が悪いと言われている。
日本は日本で、働きかけは少ないが学びの機会を提供して、
こういった思想を浸透させているという意味では、
なるほど「日本素晴らしい」と言えるのかも…。

メイド・イン・バングラディシュ(☆☆☆☆)
こういう作品を観ると
「資本主義=マッチョ=男性的」で、
「共産主義=調和的=女性的」と見ることもできるが、
一方でいち早く知識を身に着けた者が
主導的な役割を任じられ、組織内でより高い地位を手に入れる、
という意味では共産主義が組織論的にはいびつというか、
矛盾を内包してることも理解できてしまう
(そういう意味では「寡頭制の鉄則」(ミヘルズ)が
組織論的に強理論だと理解してしまうわけだが…)。
21世紀は、「フェアトレード」と「資本主義」のバランスが
テーマになりそうだが、
一方でデジタル化がさらに進めば「ダイレクトトレード」
に移行しそうなので、やはり資本主義は曲がり角に来ていそうな感じはする。
もちろん、ジェンダーとか官僚主義とか、
他にもテーマが盛り込まれているので、興味深い映画である。

ストーリー・オブ・フィルム(☆☆☆)
ここ10年程の映画の中から、「歴史に残りうる」または「歴史を変えるかも」な
作品をピックアップして紹介するドキュメンタリー。
できれば一つ一つ噛みしめて観直したい作品群ではあるが、
あえて言うと、スタッフ陣が注ぎ込んでいる技術が
あまりこういう視点で透けて見えすぎてしまうのは、
あまりカッコいいことではないような気もする。
もしかしたら、映画製作者が通うような学校で観るようなヤツ?

鬼が笑う(☆☆☆)
日本では、人を殺してはいけない。
なぜなら社会が赦さないから。
なぜ赦されないのか?
それは、「殺人」の事実だけがフレームアップされるからであり、
殺した相手がどんなクソ野郎だろうが関係なくなってしまうからである
(死んだらみんないい人になるのと無関係ではないだろう)。
ラストでは「不法」を糺すために「無法」に走るわけだが、
「無法」使わせる社会の暗部に光が射すことはない。
もう、社会にはそんな余裕もないのかもしれないが…。

東京2020オリンピック SIDE:B(☆☆☆)
オリンピックを取り巻く社会や裏方にフォーカスした、
オリンピックのオフィシャル映画としては、まさに「B面」。
森喜朗に権力が集中し過ぎたのが、
いろいろと起こってしまった原因の一つと見ることができるだろう。
本人も(自称)スポーツマンだったこともあり、
今までのスポーツ界に対する貢献を否定はできないが、
本人が典型的な「体育会系男子」的な思想の持ち主で、
それを止められる人がいなかったことが問題。
開催自治体の長である小池百合子東京都知事も、
今作の監督河瀨直美も、それぞれの業界で
「女を捨てて」のし上がったきらいがあるので、
女性委員の人数を問題視無かったことも問題だし、
組織スタッフの無能ぶりというか、
「本人が好きでやってるんだから、全部森さんにお任せ」
みたいな態度でやってるため、
あまりにもこの仕事が属人的になってしまったことも問題だろう
(この辺りも「寡頭制の鉄則」では問題視してるが…)。
やっぱり、本当の意味で「やる気」が無いんなら、
こういうカネや人がたくさん動くイベントはやらない方が良い。

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