ゴースト・フリート(☆☆☆)
現代の「蟹工船」は、自ら飛び込むのではなく、
拉致され、あるいは騙されて乗せられるもののようである。
そして、そうやって不当な収奪によって捕られた魚介が、
実は缶詰や魚粉、ペットフードとして堂々と流通しているようなのである。
今作では、そういった現代の「蟹工船」の現実と、
そこから人々を救い出そうとするNPO団体の活動を追う
ドキュメンタリーである。
ただでさえ、水産資源の枯渇が騒がれている時代である。
このような不当な手段で知らず知らずに水産資源が収奪されているとすれば、
これはとても他人事では済まされないだろう。
しかも、この船で働いている人々には賃金が支払われていない。
これは労働力の無駄遣いであろう。
一方で、海の上には国境も無いし、船の上は孤島のようなもの。
いわば国際的無法地帯ともいえる場所なわけである。
それこそ、国際協調で取り締まらなければいけないところだろうが、
時節柄、そううまく行ってないんでしょうねぇ。
このNPOの活動には、要注目だろう。
モガディシュ(☆☆☆)
国連加盟を目指す南北朝鮮がアフリカで活動していた頃に、
「ブラックホーク・ダウン」でもおなじみ
ソマリア内戦に巻き込まれ、
まさに「呉越同舟」するという史実に基づく話。
日々の生活に汲々とするアフリカ庶民からしたら、
資本主義だ社会主義だといったイデオロギーでもめている様は、
滑稽というより些末な差でしかないのだろう。
「政府に手を貸すヤツは全員敵」と言わんばかりに、
各国大使館に「国外退去、さもなくば死」を突き付けてくるのである。
しかし、ココである意味「韓国映画のうまさ」さが冴えわたる。
左派の文在寅政権下で作られたこともあってか、
綱渡りながらうまく立ち回っており、
その辺りの緊張感ある演出には観るべきものがある。
政権におもねるわけではないのだろうが、
オバマ政権時も黒人絡みの映画がずいぶん出てきたように、
政権の発信したいものを発信すれば、
なにがしかの利得もあるというものであろう。
まぁ、海外公館に行ってワインを買い占めたり捨てたりするどっかの国とは、
一味違うことは確かである。
ザ・ロストシティ(☆☆)
ザ・無駄遣い。
ある意味、実に日本的な発想のアクション映画と言えるかも。
あえて言うならウザいモデルのアラン(チャニング・テイタム)の
成長を見ていく物語。
他には何にもありません。
ナワリヌイ(☆☆☆)
21世紀にもなって、世界を敵に回して戦争を仕掛けるほどの
怖いもの知らずと言ってもいい、プーチンロシア大統領。
そんな彼ですら、名前を口にしたくない、
「ロシア反体制派のカリスマ」アレクセイ・ナワリヌイのドキュメンタリー。
それほどの存在だから、毒殺されかけたわけだが、
今作の凄いところは、九死に一生を得た彼自身が、
容疑者に電話をかけるなどして真相を暴き出す、というところ。
「有名になったら簡単には殺されないだろう」と思って、
せっせと発信し続けていた彼からすると、想定外だったようだが、
ロシアは、いやKGB出身のプーチンは、そういう男なのである。
その辺りも含めて、すっかり100年前の景色に逆戻りした世界情勢だが、
ナワリヌイはそこにくさびを打つことができるのだろうか…。
バズ・ライトイヤー(☆☆☆)
日本のこういったフィギュアがそうであるように、
こういうおもちゃに心惹かれ、購入するには、それなりのストーリーがあるだろう。
それがまさに本作であろう、とは思うのだが、
本国アメリカではあまり評判が良くないようで…
(内容に問題がある、と言えばあるんだが…)。
確かに、あまり子供向きの内容には見えなかったが、
ワシ自身「ガンダム」で育ってきた世代だし、
富野由悠季氏も「子供向けだからって子供だましなものは作らない」
と言ってるように、子供は案外見抜いてしまうものなのである
(そういう意味ではアンディ少年は「聡明な子」なのかもしれない)。
評価しにくい、と言えばしにくいが、そこまで悪い映画とは思えないんだが…。
男たちの挽歌(リマスター)(☆☆☆)
ジョン・ウーが創造したと言っても過言ではない
「香港ノワール」の決定版ともいえる今作。
隔世の感のある設定ではあるが、
あいかわらず「カッコいい」映画であることは確か。
そして、ハトはともかく二丁拳銃はこの頃から健在。
FLEE/フリー(☆☆☆)
言ってみれば「ねほりんぱほりん」方式の今作。
内容は充分生々しいが、
良くも悪くもアニメ化されてることによりマイルドな仕上がり。
難しいテーマをいろいろ内包してる作品なので、
観客を選ぶ作品ではあるが、何も人の悩みは一人に一つとは限らないので、
受け止める覚悟は必要だが、こういうのに一発殴られるのも悪くないだろう。
エルヴィス(☆☆☆☆)
チラシに「ビートルズもクイーンもエルヴィスがいなければ存在しなかった」
とあおっている一方、
鑑賞前に「見世物の最終形態としてのエルヴィス」といったコラムを
なまじ読んでしまったせいで、ある意味独自の文脈と捉えることができたのは大きい。
この文脈だと、見世物小屋出身のトム・パーカー(トム・ハンクス)が
エルヴィスという素材でどう稼ぐかの方がよりフレームアップされるし、
より新しいエルヴィス像に近づけたような気がする。
まぁ、それ以前に「ワシ、エルヴィスのこと全然知らんかった」
ことを思い知らされるわけだが…(例:兵役に就いてたとか)。
韓国スターが同様のことに悩まされているようだが、
時代や立場が違うとはいえ、
あの立ち回り方はちょっと真似できないかも。
「彼を殺したのは誰か?」の答えは、含むものがいろいろあって興味深い。
ブラック・フォン(☆☆)
「死者との対話」、「予知夢」が物語のカギを握る、
「ザ・サイコスリラー」な作品だが、
言ってみれば「イット」の劣化版みたいな話なので、内容はそれなり。
ベイビー・ブローカー(☆☆☆☆)
内容、展開、バックストーリーの分厚さを観るにつけ、
いかにも是枝作品といった出来栄え。
こういう重い作品が、日本では作りにくくなったのかもしれない。
「日本映画界のドン」角川春樹が「制作委員会」を作ったと、
ある番組でやっていたが、
今となっては功より罪の方を問う声の方が大きいように思える。
確かに、多くの出資者を納得させるためには、
当たり障りのない作品が多くなるのは仕方ないだろうが、
海外みたいにファンド化するなど、大きなバジェットを個人的に得る方法が
この国には無い事は確かに大きい。
一方で、国が投資を推奨し始めてるように
(このこと自体は多分に打算を含んでるんだろうが…)、
そういうシステムが生まれてくるぐらいの危機感が、
映画界に無いのも問題のように思える。
このまま、例えば是枝監督が外国資本で映画を撮るようになれば、
それこそ「人材流出」となりかねないと思うのだが…。
マーベラス(☆☆☆)
女性を主人公に据えるアクション映画が欧米でも増えてきた。
今作は、登場人物こそ少ないが脇役や監督に大物を据え、
主演女優マギー・Qの出自にある程度寄せた感じの設定にしてるように見る。
なるほど大人の艶みたいなものを感じるが、
やることはそれなりにやってるので、観応えはある。
ただ、突き抜けた魅力が無いので、星の数は控えめ。
神々の山嶺(☆☆☆)
2016年の実写版は鑑賞済み(☆x3)。
ある意味やりたい放題なので、時代の空気感とかはこっちの方が上だが、
内面的な表現等がどうにもやり過ぎな感じ
(逆に邦画実写版はやらなさすぎというか表現力不足)で、
ちょっとシラケてしまうところもあった。
「実写だから良い」「アニメだから落ちる」とかは、
ワシの中では無いが、お互い悪い面がちょっと目立つので、
悪い意味で甲乙つけがたい、というのがホントのところ。
もしかしたら、「海外のビッグバジェットで実写化」が正解なのかも。
キャメラを止めるな!(☆☆)
原作は、ワシがレビュー書くのさぼってた時期に公開された作品。
当時の感想は、
「面白いが、1回嚙んだら味がなくなる」という感じのものだったと思う。
そういう意味では、海外リメイク版とはいえ
「もう味がしない」はずの作品を観に行ったわけだが、
やっぱりそんなに味はしなかったね。
基本構造全く同じだし(まぁ、そこもネタにするんだけど)。
そういう意味では、初見じゃない人の楽しみはもうそこしかないわけで、
ワシはそんなに楽しめなかった。
吟ずる者たち(☆☆☆☆)
最近の旅行では結構な確率で旅程に入れてる「日本酒の酒蔵」。
まぁ、そのぐら興味深く日本酒に触れてるわけだが、
そういうワシが見て日本酒に関する新たな発見が多かった作品。
なので、初めから万人に勧める作品ではないと思ってるが、
モノづくりの本質がいろいろ詰まってる作品ともいえる。
グレイマン(☆☆☆)
B級アクション映画の王道。
確かにサブスク(ネトフリ制作)で充分な作品と言えなくもない。
できる主人公と、派手だけどダメな悪役という構図。
この「派手さ」がある意味では大事なのだが、
派手であればあるほど「王道」で「ベタ」になるという、
致命的な矛盾を抱えてるわけで…。
ネトフリの勢いが落ちてるのも、なんかわかる…。
ワシは嫌いじゃないよ。
ポゼッサー(☆☆)
SFモノ、特に近未来モノでは、
「ほんとに起こるかも」と観客に思わせるのが重要だと思うんだよね。
でも、今作の場合システムに無理があるというか、
「回線切断の為には自殺しないとダメ」って言うのがねぇ…。
案の定、今作の主人公は「自殺して回線切断できない」ことに悩むので、
そのせいでコトがどんどん大きくなってしまう、というね…。
これを冷静に観始めてしまうと、全然作品世界に入って行けなくなるので、
評価としてはこのぐらいしか出せないかな…。
キングダムⅡ(☆☆☆)
五部作確定と言われてるこのシリーズ。
まぁ、それが見え透いてるとなると、今作はどうしても
繋ぎの作品感が強い。
ちょっと視点をずらすと、「羌瘣(清野菜名)のための舞台」
的な側面が大きい。
おそらく「キングダムⅢ」は相当大きな話になるはずなので、
そこに向けた超豪華キャストがラストに向けて目白押し。
アクションは悪くないが、特筆するべき何物も無い。
繋ぎと割り切って観る作品。
夜を走る(☆☆)
ダメな奴は、何をしても、何処に行ってもダメ、と思わせる作品。
だからと言って、小賢しく立ち回ってる奴もまた、
小賢しいところから抜け出せないんだが…。
結局、殺人の主体が分からないままだし、
モヤモヤさせられるだけで希望が無い。
海上48Hours(☆)
登場人物(サメも含めて)間抜けが多すぎてあきれるヤツ。
途中で生き残るヤツがだいたいわかっちゃうし、
スペクタクルも無いから、完全にタイトルに騙されたヤツ。
してやられた。
スープとイデオロギー(☆☆☆)
けっこう前に「チスル」っていう、韓国の黒歴史「済州島4・3事件」を扱った
映画を観たんだけど、
今作のタイトルのうち「イデオロギー」の部分は同じ。
ただ、「チスル」の主人公が、この事件に巻き込まれた
ノンポリの住民だったのに対し、
今作の主人公で今作の監督のお母さんは、
その両親が熱心な朝鮮総連(北朝鮮系)の活動家だったそうなので、
「チスル」的に言えば巻き込んだ側と言ってもいいだろう。
その辺りの視点の違いこそあるものの、
お母さんが当時まだ若かったこともあり、
また当時の韓国政府が「島民全滅もやむなし」という姿勢のせいで
(だから「黒歴史」扱いなわけだが…)、
だいたい同じメに遭ってるというね…。
ある意味、日本、韓国、北朝鮮それぞれの生き辛さを味わってるわけだが、
いい具合に中和されてるのが、お母さんが作る参鶏湯と、
監督さんのカレシとの交流。
歴史的ないきさつから長くお母さんが行くことができなかった済州島に、
文在寅政権になって入国できるようになったため、
そこに行くまでのロードムービー的な色合いもあり、
いろいろと興味深い内容ではある。
ボイリングポイント/沸騰(☆☆☆☆)
「全編ワンショット」という、超長回し作品。
とはいえ、あまりその点に今作の本質は感じない。
むしろ、従業員個々人にとにかく「余裕が無い」さまを、
エピソードとして提示されるため、
その緊張感を助長するためのエッセンスとして
「ワンショット」を選択した、と考えるのが自然かも。
フロアマネージャー2代目のお嬢さんのようで、
正直ガバナンスが成立してない。
一方、オーナーシェフは、忙しさゆえか妻子と別居中で、
しかもシェフ業以外に手が回っていないのか
特に店舗の衛生面に問題を抱えている。
そこに、面倒な客やオーナーシェフのライバルが
グルメ評論家を連れて来店…、と緊張の局面が続き…。
ラストはある意味衝撃的だが、
ある意味納得というか「残当」としか言いようがないというか…。
こういう人は、あんまり独立とか考えない方が良いんじゃないかな…。
組織人の悲哀を感じさせる作品。
GのレコンギスタⅣ(☆☆☆)
クライマックスのベルリvs.マスク戦は、
そこまでと筆致も違ってすごく気合を感じるが、
今回の主役はマニィだろう。
第5部も少し「富野由悠季の世界展」で予習したが、
彼女は実に健気。
その献身が第5部に波乱を巻き起こすことになるのだが…。
まぁ、そういう意味で言えば今作も
大団円に向けた繋ぎの回と言えるだろう。
サツゲキの引受先が決まったものの、
映画部門だけ別というのがやはり引っかかる。
ハナから「ダメならそこだけ潰す」戦略が透けて見えるわけだが、
引受先がゲーセンでおなじみ「GIGO」の会社なんだから、
まぁ仕方ないのかな。
そういう意味では、やはり当てにならない気はするのだが…。
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