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【3週間遅れ】鑑賞映画レビュー 2022年10月分

プリンセス・ダイアナ(☆☆☆)
プリンセス・ダイアナがカメラの前に出て以降の顛末を、
それこそアーカイブ映像で振り返るドキュメンタリー。
しかし、「スペンサー ダイアナの決意」のところでも触れるが、
彼女自身下級とはいえ貴族の出身であり、
その息苦しさは少なからず理解していたはずなのである。
にもかかわらず、一般人なら高いと思える壁を、
貴族出身の彼女も越えられなかった。
その辺りの原因(おそらく子供時代からの生育環境の影響が大きいと思われる)
を全く掘り下げていないので、
突然花嫁候補として彼女が現れる体裁になってしまっている。
それ以降のことは、まぁよく報道されていたこと
(そういう様子も割と克明に伝えているのが今作なのだが)なので、
そう目新しいところは無い。
で、「彼女を本当に"殺した"のは誰?」という話になるが…、
その辺は「スペンサー ダイアナの決意」のところで書くことにする。

ブライアン・ウィルソン 約束の旅路(☆☆☆☆)
「サーフィン・U.S.A.」などでおなじみビーチボーイズの、
頭脳にして心臓とも言える、ブライアン・ウイルソンのドキュメンタリー。
詳しいこと全然知らんかったワシにとっては興味深い内容だった。
かなり早い時期から幻聴に悩まされていたらしく
(だからと言って薬物中毒は肯定されるものではないわけだが、
時代を考えるとまだわりと寛容な頃だったからねぇ…)、
それによってほかのメンバーといろいろあったようである。
一方で、かなり優秀な「音楽の神様」が降りてくる方らしく、
今も曲を作り続けているのがすごい。
現役(今も現役だが)当時の音楽も古臭くないので、
アメリカの若い子が今でも聴くのも頷ける。

ソングバード(☆☆☆)
ロックダウン期のロサンゼルスでゲリラ的に撮影された作品。
こういう事できちゃうのが、アメリカ人の豪胆さとも言えるし、
目ざとさとも言えるだろう。
内容もウイルス絡みでタイムリーだし、
ちゃんと恋愛要素とか追いかけっことかエンタメ要素も盛り込んでくる。
キャラクターがわりと定型的なのが残念ポイントではあるが、
このB級感はキライじゃない。

七人の秘書 The Movie(☆)
年初にぶっかました「大怪獣のあとしまつ」は、
いいだけ擦られ過ぎて、今更ワースト1とか言っても面白みがない。
というわけで、新たなワースト1候補の登場。
ドラマ版観てなかったが、映画版は大きなことやってくるだろう、
と思って観に行ったのが運の尽き。
航一(玉木宏)の最終的な意図を最後にくっつけただけで、
あとは40年ぐらい前の台本なんじゃないだろうかってぐらい、
陳腐な出来。
ドラマ鑑賞前提なキャラクターの薄っぺらさ。
挙句に、開幕「釣りバカ日誌」キャスティングで、
日本のテレビドラマ界のダメな部分が全部出てる作品。
「観賞価値無し」というより「観てソンした」作品。

1950 鋼の第7中隊(☆☆☆☆)
とにかく、スペクタクルは満載な作品。
ただ、史実に基づいてるわりには、
描写がいちいちヒロイック過ぎて嘘っぽく見えるので、
そういう意味では損してるかも。

キュリー夫人 天才科学者の愛と情熱(☆☆☆)
少し前に「研究資料から放射能が検出された」ことでも有名な、
「史上初めてノーベル賞を2回もらった偉人」キュリー夫人の伝記映画。
ただ、内容は偉業一辺倒ではなく、
1回目のノーベル賞受賞の経緯を、
夫ピエールとのなれそめ含めてやったり、
その間に生まれ、後にノーベル賞を受賞する娘イレーヌの話など、
偉人伝に載らないような話もちらほら。
まぁ、機械の無い時代の鉱物研究の苦労とか、
小ネタが意外とこういう作品は面白いんだけど、
そういう意味では万人受けしにくい作品ではある。

夜明けまでバス停で(☆☆)
原案は2020年に渋谷区幡ヶ谷で実際に起きた事件より。
ただ、内容はいろいろと改変されてる。
途中までは「東京難民」みたいに日本の暗部をえぐるだけの
作品なのかな、と思ってたんですが、
「腹腹時計」が出てきた辺りで完全に元ネタから脱線。
というのも、今作の監督さんは左翼青年だったらしく、
大学闘争が原因で中退した経験もあるそうで…。
じゃあ仕方ないか…。

ウクライナから平和を叫ぶ(☆☆☆)
大陸国家のややこしさは、
海洋国家、しかもほぼ単一民族国家である日本人には、
理解しにくいものがある。
「ドンバス」(2022年6月分参照)もかなりややこしい作りだったが、
今作も短いわりに情報量が多くて、
整理がつかないうちに終わっちゃった感じ。
歴史的経緯込みで別立てで深掘りしてみたい話題ではある。

オカムロさん(☆)
多くを語る必要のない、しょーもない作品。
オカムロさんの正体が「岡室さん」であり「お禿さん」だったのは、
ワシの予想としては半分正解で半分外れ。
ただそれだけ。

紅い服の少女 第1章 神隠し(☆☆☆)
この後すぐやる「第2章 真実」の前振り的な内容ではあるが、
作品の毛色がちょっと違うのでいちおう別立てで書く。
とはいえ、結局前振り的な内容で、
作中で「魔神仔(モーシンナア)」と呼ばれる魔物が、
どういった所業をするのかを示しつつ、
その中で翻弄される人々を描く。
映像的にそこまで怖がらせに来てないので、
ホラー映画としてはマイルドな内容。

紅い服の少女 第2章 真実(☆☆☆)
「第1章」の数年後、という設定だが、
中で行われてることは、どこか懐かしさを思わせる。
「霊幻道士」の道士的な女性(実はすべての根源)が、
それこそ呪符やおまじないを体に書いたりして
「魔神仔」に対抗したり、
「虎爺」という道教の神様を自らに憑依させて
「魔神仔」に対抗する男が現れたりと、
80年代のエンタメっぽい作り。
「虎爺」を憑依させるのが、若いイケメンなのは、
日本の変身モノの影響?
こうなると、「第1章」を実際の事件とフィクションの橋渡しとして、
「第2章」でエンタメ作品として完成させる、
という構造になっているようにも見える。
ただ、全体的な内容はそれなりの出来。

スペンサー ダイアナの決意(☆☆☆)
日本の現皇后にも言える話だが、
「注目されること、息苦しい家に嫁ぐこと」は、
付き合いだした頃からなんとなく分かるでしょう、
と言いたいわけである。
特にダイアナ妃は、「プリンセス・ダイアナ」のところでも書いたように、
下級とはいえ貴族の生まれ。
本人は紆余曲折あってわりと奔放に育てられたとはいえ、
そういう世界であることを全く知らないわけではあるまい。
それでもそういう世界に嫁いだならば、
「家族が大事」というのはわかるが、
わがままが容易に通るようなところでないことも容易に想像がつくはず。
そこを折り合えない時点で、自分で自分を追い込むようなことになるのは、
むしろ自明のことと思うんだが…。
ゆえに、本人の苦悩は本人の内側から発してることであり、
チャールズの不倫はその根を深める要因ではあるが、
チャールズが貞淑な夫だったとしても、
王室内での息苦しさはそう変わらなかったように思える。
王室にとって、不人気なチャールズに代わって、
美人で気さくなダイアナが露出する事の意味は大きかったが、
家族が大事な彼女にとって、それも重荷になっていたかもしれない。
ただ、国民の人気者ダイアナを、
今も不人気なチャールズはどのような思いで見ていたのだろうか。
男であるワシにとっては、そっちの方が気になるが、
王様になったばっかりだし、そういう心情はなかなか吐露されないだろうな…。

RRR(☆☆☆☆☆)
アジアの映画大国インドが、気合十分でお送りする最強の刺客!
とにかく圧がすごい!
映画の舞台が舞台なだけに「イギリス人以外は楽しめること間違いなし!」
というのもうなずける。
「スーパー30」とともに今年の最高賞候補ではあるが、
ちょっと気合が入り過ぎてコッチを推しにくくなってるのがなぁ…。

グッド・ナース(☆☆☆)
「空気注射」も怖いけど、多分結構な量注射しないと死に至らない、と思われる。
しかし、今作で使われている「インスリン注入」は、
体内で作られる物質でもあるので証拠が残りにくく、
また点滴中などなら自然に注入もできてしまう。
そういう意味で言えば、実行犯(エディ・レッドメイン)は当然怖いが、
この「殺人」を半ば放置している病院側も相当怖い。
でも、患者側の支払い能力とかで「間引き」してる可能性とか考えると、
実行犯は実は病院の意を挺して実行してる可能性も…。
捕まった実行犯が黙秘していることもあり、
そこまで深く立ち入れてないのがザンネンではあるんだが、
新型コロナの現場も含め、医療現場にかかる負荷を
改めて考えさせられる作品ではある。

アフター・ヤン(☆☆☆☆)
哲学的な作品。
正直あまり語りたくない作品でもある。
「考える」よりも「感じる」べき作品。
「生と死」や「幸せ」とか「人としての在り方」とか、
そういった問題を投げかけてくる作品ではある。

原発をとめた裁判長 そして原発をとめる農家たち(☆☆☆☆)
タイトル前半の話は、むしろ法廷戦略的な話で、
コレはコレでエンタメっぽく仕上げることも可能だろうが、
日本でそれをやると相当めんどくさいことになるので
(だから日本のショウビズが曲がり角に来ちゃうんだろうけど)、
まぁこのぐらいでいいのかな…。
後半の話は、悪く言うと「ソーラーシェアリング」の宣伝映画的な
ニュアンスにも見えてしまうんだが、
ワシは初めて触れた情報なので、
むしろこのぐらいあざとくプロモーションしないといけない話かも。
太陽光発電始めても風力発電始めても
「景観ガー」とか言って騒ぐぐらいなら、
限られた平地の有効利用という意味でも一考の余地がある話だとは思う。

君だけが知らない(☆☆☆)
どんどん「うまさ」が際立ってきてる韓国映画。
今作も「情報の小出し」によって
主人公(ソ・イェジ)の状況が一変する面白さがある。
ただ、逆に言うとそれだけの映画とも言える。
主人公の夫ジフン(キム・ガンウ)は、
瞬間的判断が必要なことが続くとはいえ、
事後承諾も取らず自分で全部抱え込んでしまうことで、
むしろ誤解を招いている。
ジフンとしては「巻き込みたくない」という気持ちなんだろうが、
彼女にとっても身内の事なので、
初めから巻き込まれてる体裁でやって行った方がよかったのでは…、
とも思うのだが、創作の世界は「バカが話を転がしていく」ので、
展開上仕方ないのかな。

ウンチク うんこが地球を救う(☆☆☆☆)
日本の原子力政策を指して
「トイレの無いマンション」と言うことがあるが、
今作はまさにその「トイレ」の話。
後述する作品とも関係がある話なのだが、
上下水道の整備が公衆衛生には必要不可欠、というお話。
野生においては「野グソ」したものを
虫やら微生物やらが処理してくれるが、
人間界ではにおいのこともあるし、そうは行かないわけである。
そして、小麦不足などに端を発する「肥料不足」を
解決する上でも「昔返り」で日本では人糞尿を肥料として
改めて利用…、したら跡継ぎまた減りそうだな。
ただ、「持続可能性」という意味では
コレも一考の余地ありとは思うんだが…。

荒野に希望の灯をともす(☆☆☆☆)
医師としてアフガニスタンに向かった中村哲氏が、
気が付けば用水路建設に着手しなければならなかった理由の一つは、
いみじくも「ウンチク うんこが地球を救う」で語られていた
「病気を減らし、清潔な社会を保ためにはうんこの処理のための下水道が不可欠」
というところにつながって行くのである。
新型コロナの感染状況を把握する際にも
下水道を調べるわけだから、用水路建設は立派な「予防医療」といえるだろう。
彼の死に関して今作では詳しくは触れていないが、ある意味「帝禹」
(中国神話上の「五帝」のひとり。黄河の大洪水を水路建設によって鎮めたとされる)
ぐらい偉大になってしまったことを恐れる何者かによって
「殺された」と考えるのが自然なのではないか、と思った。
そのぐらい、現地で汗をかいて、現地住民とともに大事業を成し遂げたわけである。
権力闘争に血道をあげるどこぞの政治家連中よりも、
よっぽど「人の上に立つべき人物」であると思われる。

MONDAYS また月曜日がやってくる(☆☆☆)
「タイムループ」がテーマの本作。
チラシには以下のような言葉が。
「(前略)日々仕事をしている私たちも、ふとこんな疑問を持つことはありませんか?
『あれ? なんか同じことを繰り返しているような……』(後略)」
まぁ、私はそんなことはありませんし、そもそも毎週土日休める仕事でもないので、
毎週なにがしか変化があるわけですが、
広告業界ではこういうことがあるのかな?
そうです、今作は「広告業界」を扱っている「お仕事ムービー」でもあるわけです。
どっちかというと「お仕事ムービー」の側面を推した方が、
もう少しは幕数取れたような気もするんだけどね。
まぁ、作品としては悪くないんだけど…。

アムステルダム(☆☆☆)
戦前、英米には意外と「ナチス容認」の動きがあったことは、
歴史を少々かじったことのあるワシは知っていたが、
今作はそういった史実を基にした作品。
そういう意味では、戦前の時点で議会制民主主義は
ある種の曲がり角を迎えていたとも言える。
そういう動きが、例えばヒトラーを、あるいはプーチンを
勘違いさせたのかもしれない。
今作の時代の後にチャーチルが
「(前略)民主主義は、時折試みられてきた他のすべての形態を除けば、
最悪の政治形態(後略)」
と議会で言っているように、
民主主義は決して洗練された、素晴らしい政治形態とは言えない。
一方で、民主主義は古代ギリシアの時代から用いられてきた、
風雪に耐えた、使い慣れた政治形態とも言える。
閑話休題。
正直実録調で、すごく面白い感出してくる作品ではない。
だが、前述よりタイムリーな作品とはいえるかもしれない。

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