2022「勝手に映画賞」など

①月別確定鑑賞本数
 1月:18本  2月:26本  3月:13本
 4月:16本(レビュー未掲載の「我が心の香港 映画監督アン・ホイ」を含む)
 5月:21本  6月:17本  7月:22本  8月:28本
 9月:18本  10月:21本  11月:21本  12月:14本
   計:235本

②映画館別鑑賞シェア
 (1)札幌シネマフロンティア(大手系シネコン):58本(24.7%)
 (2)ユナイテッドシネマ札幌(札幌唯一のIMAX&4DX鑑賞可能シネコン):45本(19.1%)
 (3)サツゲキ(2022年経営主体が変わった地場系シネコン):73本(31.1%)
 (4)シアターキノ(札幌市内唯一の単館系):58本(24,7%)
 (5)上記以外:1本(0.4%)(ちえりあホール(札幌市生涯学習総合センター))

③評価別シェア(☆x5と☆x1のみ作品名掲載。他は本数のみ)
 ☆x5(7本)
  ・ミラクルシティ コザ
  ・死刑にいたる病
  ・トップガン マーヴェリック
  ・スーパー30 アーナンド先生の教室
  ・RRR
  ・シスター 夏のわかれ道
  ・The First SLUMDUNK

 ☆x4(52本)
 ☆x3(130本)(レビュー未掲載の「我が心の香港 映画監督アン・ホイ」を含む)
 ☆x2(38本)

 ☆x1(8本)
  ・ワンス・アポン・ア・タイム・イン・上海
  ・Pure Japanese
  ・大怪獣のあとしまつ
  ・海上48Hours
  ・バイオレンスアクション
  ・インフル病みのペトロフ家
  ・七人の秘書 The Movie
  ・オカムロさん

④2022 勝手に映画賞
 (1)ワースト部門(ワースト4以下はマイナー過ぎて意味が無いのでワースト3まで)
  ▼ワースト3位:バイオレンスアクション
   いくつかある殺し屋稼業映画の中で、キャストが一番豪華なものをチョイス。
   もっとこう…、こっそり生きてた方が良い職業だと思うんですけどねぇ…。
  ▼ワースト2位:大怪獣のあとしまつ
   年初から、あまりにも盛大にやらかしてくれた、
   伝説級の「クソ映画」。
   ここまでやられると、逆にワースト1位に推しにくい。
  ▼ワースト1位:七人の秘書 The Movie
   「ザ・ハングマン」的なのが今良い、と確かにワシは言いましたが、
   それこそ「ザ・ハングマン」全盛期の脚本としても十分通用しそうな古臭さ。
   誰か止めて差し上げてくださいよ、こんな企画。

 (2)ベスト部門(ベスト5まで発表)
  ◎ベスト5位:死刑にいたる病
   ワースト3全部邦画だった罪滅ぼしというわけではないが、
   阿部サダヲの怪演が光る作品。
   監督さんも今ノリにノッており、早晩邦画をスクリーンに上げて来なくなっちゃうかも…。
  ◎ベスト4位:The First SLUMDUNK
   原作者が監督&脚本というこだわりの作品。
   批判の声を一気に黙らすクオリティの高さを、ぜひご堪能あれ。
  ◎ベスト3位:RRR
   今年好調のインド映画の、有名な方。
   有名だから3位止まりなのは、「勝手に映画賞」の仕様なのでご了承ください。
   とにかく激アツ!
  ◎ベスト2位:スーパー30 アーナンド先生の教室
   インド映画では珍しい(?)実話ベースの作品。
   しかも、このアーナンド先生、今も今作で紹介されている無料塾を
   経営してるそうで、まさに「生きる伝説」に触れる好機!
  ◎ベスト1位:シスター 夏のわかれ道
   2年ぶりに中国映画がベスト1!
   とにかく大枚はたいて無駄にスペクタクル盛り盛りな作品とは一線を画す、
   「一人っ子政策」の闇を衝く佳作。
   日本も、他人事じゃないかもよ。

⑤その他
 (1)いよいよそのエンタメ性の高さが認知されたインド映画。
   ゴールデングローブ賞に輝くし、
   国別人口でも中国を抜く大市場を手に入れたので、
   もうハリウッドも放っておけない、ということだろう。
 (2)作品がこなれてきた中国も相変わらず要注目。
   大資本だけじゃない所を時々見せてくるので、
   小作であっても簡単に見落とせない。
 (3)国家的に映画製作をプッシュしてる韓国映画。
   「劣化ハリウッド」の域をまだ出ない、とはいうものの、
   ネトフリやアマプラに良作を供給してるのだから、
   「下手な鉄砲も~」的な期待値はある。
 (4)そして日本映画。
   視点自体は悪くないのに、とにかく多くの監督が
   「やっつけ仕事」で映画作ってるようにしか見えない。
   その点では井上雄彦氏みたいな「内なる情熱を叩きつけてくる」
   タイプの監督はある意味待望の存在と言ってもいいかも。
   あと、中途半端にCGに頼るぐらいならアニメまで振り切った方が
   いっそ日本らしいし、
   そうでなければ「トップガン マーベリック」や、
   鑑賞時にはあまり高い点を付けてないが「アライブフーン」みたいな、
   実物勝負みたいな作品の両極に振り切った方が、
   立ち位置が明確になってむしろわかりやすいと思うのだが…。
 (5)1月も間もなく終わりですが、
   1/27開始週の鑑賞分を全部無事に観られれば、
   実質1月だけで30本鑑賞達成となってしまいます。
   今年も鑑賞本数、あまり減りそうにないなぁ…。

【1か月遅れ】鑑賞映画レビュー 2022年12月分

ワイルド・ロード(☆☆)
基本的に主人公の周囲は悪役たちによって固められてしまってるので、
拙い交渉術と弱い自分をさらけ出して
一人ずつ味方にして行くしかない主人公。
とはいえ、悪とはいえ、組織のカネとブツに手を出したんだから、
状況自体は残当としか言いようがない。
せめて「ナイトライド」ぐらいの交渉術や行動力が必要だろう。
結末は一応救いがあるものの、
方向性としてはあまり爽快感のあるものではない。

木樵(☆☆☆)
親の生業だった「木こり」を、
映画監督になった今改めて掘り下げようというドキュメンタリー。
昔ながら(さすがに木を切るのはチェーンソーだが)の、
手切りからの架線による木材運び出し。
決して経済的には効率的ではないが、
「サスティナブルな林業」という意味では、
山を荒らさないようにする方法論としては正しいらしく、
木こりたちはそういった林業の在り方に誇りすら持っている。
ただ、今作に出てくる現場の木こりたちには、
良くも悪くも悲壮感が無い。
悪い言い方をすると「淡々と仕事をこなしてる」印象である。
戦後の乱開発から罪滅ぼしの植樹に、
近年の豪雨災害が重なり、山林の危機も叫ばれている。
本来は、確かに彼ら「木樵」が手を入れて、
山林の環境を整えていくことが、今特に必要となってるかも知れない。
しかし、産業財として木材の需要が大きいかというとそうでもない
(新国立競技場も、「大いなる無駄遣い」になるかも…)。
そこに、木材業者や、防災上の観点における国や自治体は、
いかにコミットして行くのだろうか…。

ブラックアダム(☆☆☆)
DCユニバースは、どう見てもアマンダ(ヴィオラ・デイヴィス)が黒幕なので、
一部大物(スーパーマンとかバットマンとか)以外は
基本彼女の手の上で踊らされる存在。
ブラックアダム(ドウェイン・ジョンソン)も基本的にはそういう存在。
そういう意味で今作は「ドウェイン・ジョンソンの無駄遣い」なんだが、
肉体自体が「映える」存在だから、
フツーに「B級アクション映画」として見れば
それなりの水準に達してしまうんだよねぇ…。
「マーベルユニヴァース」もコロナ(だけのせい?)で
迷走してる感じもあるが、
「DCユニヴァース」はカネが続かなくなってる模様。
CGグリグリの「ヒーロー映画」は、
曲がり角を迎えてしまったのかも…。

TheFirstSLUMDUNK(☆☆☆☆☆)
「週刊少年ジャンプ」の黄金期を支えた作品群の一つであり、
日本におけるバスケットボール観にいまだ大きな影響を与える
「SLUM DUNK」のCGアニメ映画。
それこそテレビアニメをやってた頃は
映画版のセルアニメもやってたわけだが、
今作ではプロバスケ選手によるモーションキャプションや、
手描き絵のタッチを生かしたCGアニメーションになってたりと、
技術面では当時とは隔世の感がある。
内容は、連載末期の名試合「対山王戦」である。
そして、今作の一番の特徴は、
主役が桜木花道ではなく宮城リョータにされている点。
その辺りや声優陣の変更で公開前は
ずいぶんと批判がなされていたようであるが、
さすがの出来の良さで公開されたらそういう声がぱったりとなくなった。
沖縄時代からの宮城の半生を追いながら、
湘北のチームメイトや対戦相手の山王の選手にも一部フィーチャーしつつ、
見事な盛り上がりの中試合が進んで行く。
試合内容は連載当時とおおむね同じなので、
当時しっかり読んでいた諸兄なら結末はわかっていると思うが、
ワシは久しぶりに観て「やっぱりよくできてるなぁ」と思わされた。
北海道が誇るプロバスケットボールチーム
「レバンガ北海道」は全く情けないありさまだが、
今作は本当に爽快な試合を見せてくれる。

日本原 牛と人の大地(☆☆☆)
こんな地名があることすら知らなかったので、
日露戦争後に旧軍が強制買収したことも、
それを自衛隊が引き継いでることも、
地元住民が「入会(いりあい)」して共同利用してることも、
全然知らずにこの映画を観てしまいました。
今作で追いかけてる内藤さんは、
入会地内で放牧、耕作している唯一の農民となってしまった。
聞けば最近は、演習地となっている現地では、
米軍との共同演習なども行われており、
以前のように自由に演習地内の「入会地」に
入れなくなってしまっているようだ。
そもそも内藤さんは、友人が安保反対運動の中で亡くなったことを
きっかけに医師の道を諦め日本原の農家に婿入りし、
抵抗の意味で演習地内を耕作していたのである。
今も、抗議運動を繰り広げているが、
現実は力のある方に都合の良いように進んでいく。
そうは言っても、国防を無視して国家が成り立つはずもないので
(そういう意味では、日本はそこでアメリカに首根っこつかまれてるわけだが)、
最近のようにあまり急激でなければ、
国際状況なんかを考えて防衛力自体は強化せざるを得ないわけで…。
今のようないびつな状況を作った戦後政治を、
本来はしっかり総括しないといけないんだろうけど…。

シグナチャー 日本を世界の銘醸地に(☆☆☆)
別に酒類に限った話ではないが、
「ものづくり」がテーマの映画とかを観てると
カンタンに感化されちゃうワシ。
今作では「甲州」というブドウの品種が出てくるが、
作中でも語られているように、
一説には奈良時代から統治に根付いている品種なんだそうな。
初めて知ったわぁ。
歴史的にブドウと深くかかわっている土地だけあって、
今作にも登場する麻井宇介(今作では榎本孝明)を中心に、
ワイン生産が盛んにおこなわれているのは、もはや周知の話。
今作では、麻井がメルシャンで培ったものを受け継いで、
安蔵光弘(平山浩行)が奔走する話。
もう一つ、ワインの添加物として亜硫酸塩を
「添加する」「添加しない」の話もあったが、
日本酒でも醸造アルコールを添加するしないが昔からあって、
その質に至るまで論争があるわけだが、
ワインに関しては飲み比べた事が無いので、
どのくらい影響があるのかわからないので、
今度の見比べてみたいかな。
ワイン好きには悪くない内容だが、
2023年にもっとすごいのが控えてるので、ねぇ…。

人生クライマー(☆☆☆)
今作を観た後に、栗城史多のNHKスペシャルを観る機会があったんだけど、
一見同じようにムチャをしてるように見えて
(山野井さんも指いっぱい失ってるし…)、
生きて山を下りるための「優先順位」に関しては、
やはり山野井さんの方がちゃんとしてるっていうか、
結局「誰のために山に挑むのか」って話なんだよね。
やっぱり、山って「自分と向き合う場所」だなって、
改めて思いました。
2023年に入って、ワシのホームマウンテン「手稲山」で
遭難事案が起こってるのは本当に残念だが、
ワシもさすがに冬山には挑戦しないから、
「ムチャしてるヤツがいるなぁ」というのが正直な感想です。
雪解けが進んだら、今年も懲りずに山登りたいですね。

ケイコ 目を澄ませて(☆☆☆)
聴覚障害者の女性(岸井ゆきの)がボクシングをやる、という今作。
確かに、耳が不自由なのだから、
セコンドの指示とかは全然聞こえないだろうが、
ジムの会長(三浦友和)が作中で言うように
「彼女は目が良い」そうなので
(その割には結構いいパンチもらってた気が…)、
会長から見れば「見どころがある」のだろう。
実際、五感の一つが不自由だと、他の感覚が鋭敏になるみたいなので、
「目が良」くなる可能性は充分にあるだろう。
ただ、彼女は自分の能力の限界云々ではなく、
どうもこのジム、特に会長やトレーナーと過ごす時間に
意義を見出しているように見える。
ゆえに、後半「会長が入院」したり「ジムを閉める」とかとなって、
彼女がボクシング、というかジムに向かう気持ちが
急速に萎えてしまったように、ワシには思えた。
ボクシング映画、というよりは師弟関係の一つの形として、
今作は観るのが最適解と見るが、どうか。

ジョン・レノン 音楽で世界を変えた男の真実(☆☆☆)
ホント、どんだけビートルズって擦られるんだろうかねぇ…。
まぁ、戦後音楽の一つの革新と言われてるグループだからねぇ…。
今作では、その中心とも言えるジョン・レノンの、
主にビートルズ結成以前の話が中心。
だいぶ家族関係が複雑で、
それが人格形成に一つ大きな影響を与えたんだそうな。
また、そういう時期を扱ってる作品だけあって、
友人関係の証言が豊富なのも新しい。
ジョン・レノンの見方がちょっと変わるかも…。

ラーゲリより愛を込めて(☆☆☆☆)
全力で「泣かせ」に来てる今作。
まぁ、最近ワシも涙腺が緩くなったようで、
決意に負けて泣いてしまったが…。
ただ、まずその「泣かせ」に来てること自体も問題だが、
もっと言うとタイトル自体にも疑問が…。
原作は「収容所(ラーゲリ)から来た遺書」と、
映画館配布のチラシなどに小さくではあるが明記されている。
これと予告編を見合わせれば、
主人公(二宮和也)はまぁ死ぬんだろうな、
というのは容易にに察しが付く。
にもかかわらず映画のタイトルは、
その死をぼやかそうという意図しか感じられない。
今作のキモは、まさに原作タイトルにある
「遺書」の送られ方にこそあると思われる。
良い作品だとは思うが、原作にきちんと向き合っているのか、
疑問を感じる作品でもある。

ホイットニー・ヒューストン(☆☆☆)
歌声が本人による(おそらく過去の音源を使用)吹替らしいのだが、
まぁ確かにあのパワフルな声を出せる俳優がいたら、
それはそれでニュースになるっぽいので、
そこは致し方ないところか。
ただ、アメリカのミュージシャン名物と言っても過言ではない
「薬物問題」が彼女に降りかかる、
というか、彼女がデビューする頃はまだ寛容だったわけだから、
「気が付けば使ってる」状態なわけである。
その後、結婚したらしたで家庭内暴力で神経すり減らしてまたクスリ。
そして、その毒牙は彼女の一粒種にも…。
まぁ、ハッピーな結末じゃないことは知ってたけどね…。

消えない虹(☆☆☆)
14歳未満の少年は刑法犯にならないのが日本。
今作ではいくつかのそういった触法少年(&少女)を扱うわけだが、
事件が殺人なだけに、被害者遺族側としては
割り切れない気持ちがやはり大きいだろう。
一方で、ある意味贖罪の機会を与えられない
加害者側の心情に迫って行こう、
というのが今作のもう一つの視点なわけだが…。
やっぱり、日本には「赦し」のシステムが無いのが問題なのだが、
それ以前に身内を殺された痛みをいやすのは簡単ではないわけで、
かといって何かをしたら死んだ人間が返ってくる、
みたいなこともあり得ないわけなので、
被害者遺族は喪失から立ち直るしかないわけだが…。
一方、贖罪の機会を与えられないままの加害者側は、
どう先に進んで行ったらいいのか?
今作では明確な答えは出ていないし、まぁ答えなんかないだろうねぇ。
とはいえ、これをテレビでやっても、数字にはならないだろうし、
需要的に言っても厳しいんじゃないだろうか。
そういう意味では、非常に映画らしい映画と言えなくもない。

マッドゴッド(☆☆)
2022年8月鑑賞の「クリーチャー・デザイナーズ」にも出ていた
フィル・ティペット監督によるストップモーション・アニメーション。
制作30年&クラウド・ファウンディングによる資金集めにより
遂に完成、公開という運びとなったわけだが、
時間かけ過ぎたこと&監督の思い入れが強すぎたせいか、
「表現することに酔っている」ように見えてしまった。
内容も難解だったし、ちょっとグロかったし
(ある意味ちゃんとグロく見えてるのはすごいわけだが)、
万人受けの作品とは言えないだろう。

PIG/ピッグ(☆☆☆)
洋の東西を問わず田舎町
(ポートランドを田舎町と呼んでいいのかはわからんが)
には、「ヤクザではない町の支配者」というのがいるようで、
今作では元シェフで今はブタを使ってトリュフを採って
暮らしてるロブ(ニコラス・ケイジ)の取引先である
アミール(アレックス・ウルフ)と盗まれた豚を探すうちに、
町の支配者であるアミールの父と戦うことになるわけなんだが…。
最後の対決が、元シェフらしい方法で進んで行くのが面白いし、
その過程でロブもまたこの町の裏側に精通していることが
わかって行き、そのつてを使って盗まれた豚の手がかりを探す、
ロードムービー的な趣もある。
2022年の掉尾を飾る映画としては、若干物足りないが、
ニコラス・ケイジがなかなか体を張って頑張ってるのは好感が持てる。

【1か月遅れ】鑑賞映画レビュー 2022年11月分

11月分も1か月押し。
12月分手付かずだし、
「勝手に映画賞」に向けた集計もしてないし…。

パラレル・マザーズ(☆☆☆)
「生まれた赤ちゃんの取り違い」がテーマな一方、
今どきそんな病院の信用に関わるような大問題が簡単に起こるとは、
ちょっと思えないんだよね…。
実際、作中で病院を指弾することはほとんどないし…。
そうなると、「取り違い」の話はあくまでもおまけで、本論は「スペイン内戦」なのだろう。
ただ、そんな昔話をポッと出してきても興行的に厳しいだろうから…、
ということで「取り違い」を絡めてきたように思われる。
それが成功してるかというと…、結果的にどっちつかずな話になってしまってるのでねぇ…。

鳩の如く蛇のごとく 斜陽(☆☆)
「人間失格 太宰治と3人の女たち」で二階堂ふみが演じていた
太田静子が話を提供した「斜陽」の映画化。今作の主人公「かず子」(宮本茉由)は
太田静子がモデルであろう(まぁ、太宰の死後、それで色々あったようだが…)。
我を通すにしては、母子揃って少々世間知らずだった、としか思えないが、
国をしてある意味甘やかしていたわけだから、
戦後に至る荒波に呑まれてしまったということだろう。
静子は文筆をかじってたようではあるが、
女性が文筆家として身を立てるには、少々時が早かったかも。
内容は、おそらく小説以下なのだとは思うが、当時の世相を切り取る、
という意味では悪くない作品かも知れない。

犯罪都市 TheRoundUp(☆☆☆)
マ・ドンソクが主演、という時点でお察しな、アクション映画。
良くも悪くもそれだけ!
まぁ、派手に暴れてくれてるので、アクションに関しては文句は無し!

恋人はアンバー(☆☆☆)
学校という「閉塞的なコミュニティ」は、やはり問題があるよなぁ。
同性愛に関しては、宗教が絡んでくる話
(じゃあ日本人はなぜ嫌悪してるのか、って話になるんだが…)なので、
法律上違法でないようにしたところで、簡単に差別や偏見がなくなる話ではないわけである。
そうでなくても、周囲から「彼女できたか」「セックスしたのか」と囃し立てられるのが、
欧米の学校社会だったりするので、今作の主人公はさぞ生きにくいことだろう。
そんなわけで、同志的紐帯を結ぶわけだが、
属性的にお互いを愛することは(基本的に)できないわけだから、
いずれ別れの時が来るわけで…。
まぁ、今作はその辺りの描き方がなかなか秀逸なのではあるが、
そこに至る過程で、彼や彼女に感情移入できるかできないかが、
鑑賞上のカギになってくるだろう。
ワシとしては、まぁこのぐらいの評価ということで。

ステラ SeoulMission(☆☆☆)
盗まれたスーパーカー(ランボルギーニ アヴェンタドール)を取り返すために
主人公が駆るのは旧車、というより廃車寸前の中古車。
ただ、カーオーナーならわりと頷けるエピソードが見られる、
けっこうファンタジックな仕上がりになっており、
この辺りは同じ東アジア勢としての親和性を感じる。
韓国人にとっては、この旧車の韓国車が最新のレクサスと
伍するところにもテンションが上がるのかも。
ただ、そういう車がある意味主人公なわけだから、ドタバタコメディなのは仕方ない。

土を喰らう十二カ月(☆☆)
土井善晴が料理監修をしていることを「押し」にしてるわりには、
食事のブツ撮りにあまりこだわりが感じられないのは、
ツトム(沢田研二)が盛り付けをしてるから?
それに、途中から料理がどうでも良くなってしまうので、
じゃあドラマ部分が面白いのかというと、正直そうでもない。
ファンムービー?
ワシは思い入れのある俳優がいないので、こういうのはちょっと…。

ドント・ウォーリー・ダーリン(☆☆☆)
いろいろ前時代的な舞台なわけだが、
まぁ、公開から時間が過ぎてるのでネタバレしても良いでしょう。
要するに「マトリックス」的なバーチャルワールドなのである。
しかも、創造者の意図により、男性優位の前時代的な世界観になってるわけだが、
そんな中で女性が「覚醒」してしまったら、
しかもこの世界に来る前は伴侶に対して「女性優位」だったとしたら…。
この先は、さすがに実際観て確認していただきたい。

奈落のマイホーム(☆☆)
まずマジレスすると、500mも沈んだら、
太陽光は届かないだろうから、1日中真っ暗だと思うんだけどね…。
あと、こんなにキレイに沈むってことは、
建てる前に地下の調査全くしてなかったとしか思えないわけだが…。
その辺りを踏まえると、「セウォル号事故」なんかは、
起こるべくして起こったのかな、とか思ったりして…。
まぁ、スペクタクルはそれなりにあるものの、内容的には薄口。
興収ランキングにも疑問符が付く出来である。

ペルシャン・レッスン(☆☆☆)
相変わらず色んな形でアプローチされる「ホロコーストもの」。
まぁ、逃げ切る話を作ってれば、割とスリリングな出来にしやすいっていうのはあるけどね。
今作では「士官のペルシャ語教師」となって生き残りを図るわけだが、
そのペルシャ語というのがほぼ完全にデタラメ。
ただ、覚えておかないとウソがバレるので、主人公はその偽ペルシャ語を作るに当たって、
周りのユダヤ人の名前から引用しているのである。
そのことにより、主人公とナチス士官の行末が面白いことになるわけだが…。
仕上がりとしてはスリリングだが、
まぁホロコーストものとしては「まぁこんなもんかな」とも言える。

ある男(☆☆☆)
広告では多くを語っていない今作。
「加害者家族」や「在日」といった、日本でステレオタイプ的に語られる
これら属性から逃げるのか向き合うのか、あるいは否応なく向き合わされるのか。
12月に観た映画との兼ね合いもある話(特に加害者家族)なのだが、
結局この国には「赦し」のシステムが無いので、
前述を含む「属性」を隠して生きることが多い(孫正義みたいな例外もあるが)。
そうでなくても人手不足(というかミスマッチ)なこの国で、
今後いろいろな属性(2023年公開の「ファミリア」なんかも関連作になりそう)の
人材を活用しなければこの国は回らないところまで来ていると思うのだが、
そこに政府やお偉いさんは向き合ってるんだろうか…。

ナイトライド(☆☆☆)
たまに出てくる「ワンショット長回し作品」の一つ。
視点と時間がある程度限られるので、没入感はあるが、
セリフ回し若干説明的(主人公の思考を自ら提示する必要があるため)になるのが弱点だが、
今作は割とうまくやってる部類。
麻薬のバイニンから足を洗うために、最後の大取引を成功させようと目論む主人公。
しかし、トラブル発生で売り抜くための綱渡りを強いられることになるのだが、
とにかく電話を多用した会話劇で、その中に説明調のセリフを挟み込むことで、
テンポを落とさずストーリーを「見える化」している。
ラストまで一気に見せる勢いは、ワンショット長回しの利点なので、
そこを殺さずに見せ切ったという意味ではよく出来ている。
ただ、視点がほぼ固定なので、スペクタクルはあまり感じられないか。

タスカー(☆☆)
死にたい男と、報酬が欲しい男女の、ともに絶望から始まる物語。
手作り感あふれる作風をどう見るかもポイントだが、
それ以前にストーリーにさほど魅力を感じなかった。
何よりもあの決着の仕方である。
「三人寄れば文殊の知恵」っていう良い言葉がこの国にはあるというのに、
三人して「生きにくい」というところから抜け出せない。
生きるたくましさを見せられない所に、
この国の本当の「タスカー(ロシア語で絶望)」があるようにも思える。

ザ・メニュー(☆☆☆)
回収されてない伏線があったり、
ところどころもともとのルールと矛盾してるところがあったりと、
今作ありきなルールが少なくない。
とにかく、料理を食わせてくれるところとは思えない仕掛けが多く、
ぶっちゃけ料理はどうでもいい感じなんだよね。
人間の醜い部分を浮き彫りにする作品なんだろうけど、
まともな人間は一人もいないので、爽快感もないし…。

ザリガニの鳴くところ(☆☆☆☆)
とにかく最後まで観ていただきたい。
ラストの「しれっとどんでん返し」っぷりが尋常ではない。
まぁ、なるほど「真相は、初恋の中に沈む」とはよく言ったものである。
これ以上、あまり語りたくない。
気になった人にはぜひ自分の目でで確認していただきたいと思う。

声 姿なき犯罪者(☆☆☆☆)
韓国の「振り込め詐欺」がテーマなのだが、
さすが大陸国家の端くれだけあって、話がとにかくデカい。
円換算で日本より被害金額が1ケタ多いし、
中国から人海戦術でじゅうたん爆撃を仕掛けるような大仕掛け。
台本にも金をかけてるみたいだし、脚本家はなかなか売れっ子の模様。
今作でそれに対抗するのは、元刑事の建設作業員。
建設現場の上司や奥さんが詐欺被害に遭ったことに怒りを覚えた主人公は、
詐欺組織に潜り込み、内から復讐を果たそうとするわけだが…。
アクションもなかなか見ごたえがあるし、
駆け引きの要素も見ごたえがある。
わりと質の良いのが揃ってる韓国映画の中では、面白い部類に入る作品だろう。

愚か者のブルース(☆☆)
いやぁ~、男ってほんと~にダメな生き物ですね(淀川長治風)。
女に食わせてもらってるだけならともかく、
自分の仕事とまともに向き合わないし、
挙句の果てに浮気までするという、もう「くずオブくず」な主人公。
まぁ、「広島第一劇場」ありきの作品だから、
そこに思い入れが無いと、例えばこんな感じの感想になってしまうわけで…。

グリーン・ナイト(☆☆☆)
「円卓の騎士」のひとり、ガウェインが主人公の物語。
逸話の多い人物である一方、
ケルト時代とフランス騎士道導入後では扱いがかなり違う人物でもある。
今作は、それほどフランス騎士道の影響を受けていない、
イングランド詩人による作品だそうで、
強さと弱さを兼ね備えた複雑な人物として描かれている理由も、
その辺りが影響しているようだ。
ただ、話自体がややこしく、脈絡のない描写も散見されるので、
ワシは途中でちょっとついていけなくなってしまいました。
まぁ、基本的には「早く大人になれよ」的な話みたいなんですが…。
エッセンスとしては理解できる一方、
ガウェインの良さはある意味「大人になり切れてない所」とも思えるので、
そういう意味では彼の良さが今作ではあまり出てないような気もするんですが…。

シスター 夏のわかれ道(☆☆☆☆☆)
「今年はインド映画の年かな」と思ってたところに飛び出した、
突然の大本命中国映画。
主人公は、いろんな意味で「一人っ子政策」の犠牲者となった女の子。
「男の子大正義」な「一人っ子政策」下の中国で、
女の子が生まれてしまったものだから、
主人公の父親はあの手この手で2人目の子(今度こそ男の子欲しい欲しい)を
作れるように、娘を障害者ということにして、申請を出し続けました。
主人公の女の子は、あまり両親の愛を受けられず、
そのうち自立した女性として、看護師として病院に勤めながら医師を目指すようになります。
北京の大学院進学を目指していたある日、両親が交通事故で死亡。
親族から疎遠な弟を押し付けられることになるわけですが…。
「ワガママ」のベクトルが違う姉と弟との共同生活は、当然うまく行くはずもないのですが、
そこは何もできない6歳の弟と、一応母性はある姉。
だんだんなついて行くし、母性も芽生えてくるわけですが…。
弟はともかく、姉の方は追いかけていた夢と親族の期待の板挟みになるわけで…。
その辺の葛藤がとにかく良いわけです。
日本もそうですけど、「国によるバースコントロール」なんて、
ほんとロクなことが無いわけですよ。
中国は、日本以上のハイペースで高齢化社会化してるわけですしね。
中国の今を見事に活写した傑作!

あちらにいる鬼(☆☆☆)
瀬戸内寂聴が「寂聴」になるきっかけとなる話を、
彼女と浮気した男の娘さんが書いた小説を基に映画化したのが今作。
まぁ、この男(豊川悦司)も「愚か者のブルース」の主人公に劣らぬ
くずオブくずなんですけど、それでもいちおう妻子の生活の面倒は見ている分マシか。
それよりも、このくず男の奥さん(広末涼子)というのが、
実に肝の据わったお方で、並の男では絶対太刀打ちできないタイプのお方。
よくこれほどの女傑を向こうに回して女遊びしてたというか、
これほどの方だからこそ「男の甲斐性」と割り切って遊ばせていたのか…。
寂聴がいないと成立しない話なんだが、
やはり、あのお母さんの娘さんが原作を書いてるだけに、
若干視点がそっち寄りな気もするが…。

警官の血(☆☆☆☆)
日本でもドラマ化されてる、佐々木譲氏原作の同名小説の韓国映画版。
小説未読だが、けっこう再現度は高そう。
「声 姿なき犯罪者」は(元)警官が普通に事件を解決するパターンだけど、
今作は基本的には内幕もの。
とはいえ、こちらも大陸国家らしく話のスケールがデカい。
日本は、やはりいろいろと小さくまとまり過ぎ。

母性(☆☆☆☆)
湊かなえ作品は、相変わらず人間の業が深いし、
どんどん騙しのテクニックが上がってる。
今作では、親子三代の話が語られるが、
真ん中の世代に当たるルミ子(戸田恵梨香)のポンコツぶりに注目であろう。
作中で「女性には母と娘の2種類が存在する」というセリフが出てくるが、
ルミ子はまさに「娘」属性の典型なのだろう。
ただ、ルミ子の母親(大地真央)も
「そこに愛はあるんか?」というより
愛があり過ぎて「溺愛」に近いものがあるだろう。
それがある意味ルミ子を「娘」たらしめたとも言えるわけで、
その辺の距離感て本当に難しいよね。
ミステリーとしての出来はもちろん、
「家族としての愛の注ぎ方」や「家族と他人の狭間としての距離の取り方」など、
考えさせる要素の多い作品だろう。

【3週間遅れ】鑑賞映画レビュー 2022年10月分

プリンセス・ダイアナ(☆☆☆)
プリンセス・ダイアナがカメラの前に出て以降の顛末を、
それこそアーカイブ映像で振り返るドキュメンタリー。
しかし、「スペンサー ダイアナの決意」のところでも触れるが、
彼女自身下級とはいえ貴族の出身であり、
その息苦しさは少なからず理解していたはずなのである。
にもかかわらず、一般人なら高いと思える壁を、
貴族出身の彼女も越えられなかった。
その辺りの原因(おそらく子供時代からの生育環境の影響が大きいと思われる)
を全く掘り下げていないので、
突然花嫁候補として彼女が現れる体裁になってしまっている。
それ以降のことは、まぁよく報道されていたこと
(そういう様子も割と克明に伝えているのが今作なのだが)なので、
そう目新しいところは無い。
で、「彼女を本当に"殺した"のは誰?」という話になるが…、
その辺は「スペンサー ダイアナの決意」のところで書くことにする。

ブライアン・ウィルソン 約束の旅路(☆☆☆☆)
「サーフィン・U.S.A.」などでおなじみビーチボーイズの、
頭脳にして心臓とも言える、ブライアン・ウイルソンのドキュメンタリー。
詳しいこと全然知らんかったワシにとっては興味深い内容だった。
かなり早い時期から幻聴に悩まされていたらしく
(だからと言って薬物中毒は肯定されるものではないわけだが、
時代を考えるとまだわりと寛容な頃だったからねぇ…)、
それによってほかのメンバーといろいろあったようである。
一方で、かなり優秀な「音楽の神様」が降りてくる方らしく、
今も曲を作り続けているのがすごい。
現役(今も現役だが)当時の音楽も古臭くないので、
アメリカの若い子が今でも聴くのも頷ける。

ソングバード(☆☆☆)
ロックダウン期のロサンゼルスでゲリラ的に撮影された作品。
こういう事できちゃうのが、アメリカ人の豪胆さとも言えるし、
目ざとさとも言えるだろう。
内容もウイルス絡みでタイムリーだし、
ちゃんと恋愛要素とか追いかけっことかエンタメ要素も盛り込んでくる。
キャラクターがわりと定型的なのが残念ポイントではあるが、
このB級感はキライじゃない。

七人の秘書 The Movie(☆)
年初にぶっかました「大怪獣のあとしまつ」は、
いいだけ擦られ過ぎて、今更ワースト1とか言っても面白みがない。
というわけで、新たなワースト1候補の登場。
ドラマ版観てなかったが、映画版は大きなことやってくるだろう、
と思って観に行ったのが運の尽き。
航一(玉木宏)の最終的な意図を最後にくっつけただけで、
あとは40年ぐらい前の台本なんじゃないだろうかってぐらい、
陳腐な出来。
ドラマ鑑賞前提なキャラクターの薄っぺらさ。
挙句に、開幕「釣りバカ日誌」キャスティングで、
日本のテレビドラマ界のダメな部分が全部出てる作品。
「観賞価値無し」というより「観てソンした」作品。

1950 鋼の第7中隊(☆☆☆☆)
とにかく、スペクタクルは満載な作品。
ただ、史実に基づいてるわりには、
描写がいちいちヒロイック過ぎて嘘っぽく見えるので、
そういう意味では損してるかも。

キュリー夫人 天才科学者の愛と情熱(☆☆☆)
少し前に「研究資料から放射能が検出された」ことでも有名な、
「史上初めてノーベル賞を2回もらった偉人」キュリー夫人の伝記映画。
ただ、内容は偉業一辺倒ではなく、
1回目のノーベル賞受賞の経緯を、
夫ピエールとのなれそめ含めてやったり、
その間に生まれ、後にノーベル賞を受賞する娘イレーヌの話など、
偉人伝に載らないような話もちらほら。
まぁ、機械の無い時代の鉱物研究の苦労とか、
小ネタが意外とこういう作品は面白いんだけど、
そういう意味では万人受けしにくい作品ではある。

夜明けまでバス停で(☆☆)
原案は2020年に渋谷区幡ヶ谷で実際に起きた事件より。
ただ、内容はいろいろと改変されてる。
途中までは「東京難民」みたいに日本の暗部をえぐるだけの
作品なのかな、と思ってたんですが、
「腹腹時計」が出てきた辺りで完全に元ネタから脱線。
というのも、今作の監督さんは左翼青年だったらしく、
大学闘争が原因で中退した経験もあるそうで…。
じゃあ仕方ないか…。

ウクライナから平和を叫ぶ(☆☆☆)
大陸国家のややこしさは、
海洋国家、しかもほぼ単一民族国家である日本人には、
理解しにくいものがある。
「ドンバス」(2022年6月分参照)もかなりややこしい作りだったが、
今作も短いわりに情報量が多くて、
整理がつかないうちに終わっちゃった感じ。
歴史的経緯込みで別立てで深掘りしてみたい話題ではある。

オカムロさん(☆)
多くを語る必要のない、しょーもない作品。
オカムロさんの正体が「岡室さん」であり「お禿さん」だったのは、
ワシの予想としては半分正解で半分外れ。
ただそれだけ。

紅い服の少女 第1章 神隠し(☆☆☆)
この後すぐやる「第2章 真実」の前振り的な内容ではあるが、
作品の毛色がちょっと違うのでいちおう別立てで書く。
とはいえ、結局前振り的な内容で、
作中で「魔神仔(モーシンナア)」と呼ばれる魔物が、
どういった所業をするのかを示しつつ、
その中で翻弄される人々を描く。
映像的にそこまで怖がらせに来てないので、
ホラー映画としてはマイルドな内容。

紅い服の少女 第2章 真実(☆☆☆)
「第1章」の数年後、という設定だが、
中で行われてることは、どこか懐かしさを思わせる。
「霊幻道士」の道士的な女性(実はすべての根源)が、
それこそ呪符やおまじないを体に書いたりして
「魔神仔」に対抗したり、
「虎爺」という道教の神様を自らに憑依させて
「魔神仔」に対抗する男が現れたりと、
80年代のエンタメっぽい作り。
「虎爺」を憑依させるのが、若いイケメンなのは、
日本の変身モノの影響?
こうなると、「第1章」を実際の事件とフィクションの橋渡しとして、
「第2章」でエンタメ作品として完成させる、
という構造になっているようにも見える。
ただ、全体的な内容はそれなりの出来。

スペンサー ダイアナの決意(☆☆☆)
日本の現皇后にも言える話だが、
「注目されること、息苦しい家に嫁ぐこと」は、
付き合いだした頃からなんとなく分かるでしょう、
と言いたいわけである。
特にダイアナ妃は、「プリンセス・ダイアナ」のところでも書いたように、
下級とはいえ貴族の生まれ。
本人は紆余曲折あってわりと奔放に育てられたとはいえ、
そういう世界であることを全く知らないわけではあるまい。
それでもそういう世界に嫁いだならば、
「家族が大事」というのはわかるが、
わがままが容易に通るようなところでないことも容易に想像がつくはず。
そこを折り合えない時点で、自分で自分を追い込むようなことになるのは、
むしろ自明のことと思うんだが…。
ゆえに、本人の苦悩は本人の内側から発してることであり、
チャールズの不倫はその根を深める要因ではあるが、
チャールズが貞淑な夫だったとしても、
王室内での息苦しさはそう変わらなかったように思える。
王室にとって、不人気なチャールズに代わって、
美人で気さくなダイアナが露出する事の意味は大きかったが、
家族が大事な彼女にとって、それも重荷になっていたかもしれない。
ただ、国民の人気者ダイアナを、
今も不人気なチャールズはどのような思いで見ていたのだろうか。
男であるワシにとっては、そっちの方が気になるが、
王様になったばっかりだし、そういう心情はなかなか吐露されないだろうな…。

RRR(☆☆☆☆☆)
アジアの映画大国インドが、気合十分でお送りする最強の刺客!
とにかく圧がすごい!
映画の舞台が舞台なだけに「イギリス人以外は楽しめること間違いなし!」
というのもうなずける。
「スーパー30」とともに今年の最高賞候補ではあるが、
ちょっと気合が入り過ぎてコッチを推しにくくなってるのがなぁ…。

グッド・ナース(☆☆☆)
「空気注射」も怖いけど、多分結構な量注射しないと死に至らない、と思われる。
しかし、今作で使われている「インスリン注入」は、
体内で作られる物質でもあるので証拠が残りにくく、
また点滴中などなら自然に注入もできてしまう。
そういう意味で言えば、実行犯(エディ・レッドメイン)は当然怖いが、
この「殺人」を半ば放置している病院側も相当怖い。
でも、患者側の支払い能力とかで「間引き」してる可能性とか考えると、
実行犯は実は病院の意を挺して実行してる可能性も…。
捕まった実行犯が黙秘していることもあり、
そこまで深く立ち入れてないのがザンネンではあるんだが、
新型コロナの現場も含め、医療現場にかかる負荷を
改めて考えさせられる作品ではある。

アフター・ヤン(☆☆☆☆)
哲学的な作品。
正直あまり語りたくない作品でもある。
「考える」よりも「感じる」べき作品。
「生と死」や「幸せ」とか「人としての在り方」とか、
そういった問題を投げかけてくる作品ではある。

原発をとめた裁判長 そして原発をとめる農家たち(☆☆☆☆)
タイトル前半の話は、むしろ法廷戦略的な話で、
コレはコレでエンタメっぽく仕上げることも可能だろうが、
日本でそれをやると相当めんどくさいことになるので
(だから日本のショウビズが曲がり角に来ちゃうんだろうけど)、
まぁこのぐらいでいいのかな…。
後半の話は、悪く言うと「ソーラーシェアリング」の宣伝映画的な
ニュアンスにも見えてしまうんだが、
ワシは初めて触れた情報なので、
むしろこのぐらいあざとくプロモーションしないといけない話かも。
太陽光発電始めても風力発電始めても
「景観ガー」とか言って騒ぐぐらいなら、
限られた平地の有効利用という意味でも一考の余地がある話だとは思う。

君だけが知らない(☆☆☆)
どんどん「うまさ」が際立ってきてる韓国映画。
今作も「情報の小出し」によって
主人公(ソ・イェジ)の状況が一変する面白さがある。
ただ、逆に言うとそれだけの映画とも言える。
主人公の夫ジフン(キム・ガンウ)は、
瞬間的判断が必要なことが続くとはいえ、
事後承諾も取らず自分で全部抱え込んでしまうことで、
むしろ誤解を招いている。
ジフンとしては「巻き込みたくない」という気持ちなんだろうが、
彼女にとっても身内の事なので、
初めから巻き込まれてる体裁でやって行った方がよかったのでは…、
とも思うのだが、創作の世界は「バカが話を転がしていく」ので、
展開上仕方ないのかな。

ウンチク うんこが地球を救う(☆☆☆☆)
日本の原子力政策を指して
「トイレの無いマンション」と言うことがあるが、
今作はまさにその「トイレ」の話。
後述する作品とも関係がある話なのだが、
上下水道の整備が公衆衛生には必要不可欠、というお話。
野生においては「野グソ」したものを
虫やら微生物やらが処理してくれるが、
人間界ではにおいのこともあるし、そうは行かないわけである。
そして、小麦不足などに端を発する「肥料不足」を
解決する上でも「昔返り」で日本では人糞尿を肥料として
改めて利用…、したら跡継ぎまた減りそうだな。
ただ、「持続可能性」という意味では
コレも一考の余地ありとは思うんだが…。

荒野に希望の灯をともす(☆☆☆☆)
医師としてアフガニスタンに向かった中村哲氏が、
気が付けば用水路建設に着手しなければならなかった理由の一つは、
いみじくも「ウンチク うんこが地球を救う」で語られていた
「病気を減らし、清潔な社会を保ためにはうんこの処理のための下水道が不可欠」
というところにつながって行くのである。
新型コロナの感染状況を把握する際にも
下水道を調べるわけだから、用水路建設は立派な「予防医療」といえるだろう。
彼の死に関して今作では詳しくは触れていないが、ある意味「帝禹」
(中国神話上の「五帝」のひとり。黄河の大洪水を水路建設によって鎮めたとされる)
ぐらい偉大になってしまったことを恐れる何者かによって
「殺された」と考えるのが自然なのではないか、と思った。
そのぐらい、現地で汗をかいて、現地住民とともに大事業を成し遂げたわけである。
権力闘争に血道をあげるどこぞの政治家連中よりも、
よっぽど「人の上に立つべき人物」であると思われる。

MONDAYS また月曜日がやってくる(☆☆☆)
「タイムループ」がテーマの本作。
チラシには以下のような言葉が。
「(前略)日々仕事をしている私たちも、ふとこんな疑問を持つことはありませんか?
『あれ? なんか同じことを繰り返しているような……』(後略)」
まぁ、私はそんなことはありませんし、そもそも毎週土日休める仕事でもないので、
毎週なにがしか変化があるわけですが、
広告業界ではこういうことがあるのかな?
そうです、今作は「広告業界」を扱っている「お仕事ムービー」でもあるわけです。
どっちかというと「お仕事ムービー」の側面を推した方が、
もう少しは幕数取れたような気もするんだけどね。
まぁ、作品としては悪くないんだけど…。

アムステルダム(☆☆☆)
戦前、英米には意外と「ナチス容認」の動きがあったことは、
歴史を少々かじったことのあるワシは知っていたが、
今作はそういった史実を基にした作品。
そういう意味では、戦前の時点で議会制民主主義は
ある種の曲がり角を迎えていたとも言える。
そういう動きが、例えばヒトラーを、あるいはプーチンを
勘違いさせたのかもしれない。
今作の時代の後にチャーチルが
「(前略)民主主義は、時折試みられてきた他のすべての形態を除けば、
最悪の政治形態(後略)」
と議会で言っているように、
民主主義は決して洗練された、素晴らしい政治形態とは言えない。
一方で、民主主義は古代ギリシアの時代から用いられてきた、
風雪に耐えた、使い慣れた政治形態とも言える。
閑話休題。
正直実録調で、すごく面白い感出してくる作品ではない。
だが、前述よりタイムリーな作品とはいえるかもしれない。

【1か月遅れ】鑑賞映画レビュー 2022年9月分

結局9月分も1か月押し。
そろそろ建て直さないとなんだけどなぁ…。

この子は邪悪(☆☆)
一言でいうと「イカレタ映画」。
以下チラシにある文言から。
・「予想外の(ひどい)ストーリー」
・「想定外(というかリアリティ皆無)のラスト」
・「世にも奇妙な謎(謎っていうか…)解きサスペンス」
まぁ、海外の映画祭で賞を取った時も
「ファンタジー部門」で取ってるみたいなので、
リアリティとか求めちゃいけないんだろうけど…。
それにしたって、正直ツッコミどころだらけ。
初めからそのつもりで観ないと、
「カネの無駄」みたいな目に遭うこと必至である。

激怒(☆☆☆)
戦前を思わせる監視社会な近未来が舞台。
そうなる前に暴力(が過ぎる)刑事として、
アメリカで再教育(なんで?)を受けた刑事(川瀬陽太)が主人公。
まぁ、良く言えば「昭和の刑事」なんだが、
「潔癖社会」と化した今作の舞台となる時代においては、
ただただ生きにくいわけである。
で、まぁブチ切れて大暴れするわけですが…。
「この子は邪悪」と違って、
舞台設定とかが振り切れてしまってるので、
初めからそういう気持ちで観られるのが大きいし、
そう思って観ると、日本という国の暗部も見えてくる。
何のことはない、この国はこの「潔癖社会」的な要素を
常に内包しているのだから。
極端な設定からリアルをあぶり出す、という意味では、
悪くない作品だとは思うが、ちょっと表現がグロいかも。
まぁ、ワシは予告編で予習済みだから受け止めたけど…。

ブレット・トレイン(☆☆☆)
さんざん「相性問題」を持ち出してる伊坂幸太郎原作の映画化。
まぁ、正直今回も気に入らない部分の方が多いんですが、
設定的にはこういう「コレジャナイ日本」の方が
この世界観には合ってると思う。
「ちゃんとした日本」で「殺し屋だらけ」という状況を作るのは、
ほんと無理があり過ぎるんだよねぇ
(まぁ、相変わらず日本の警察は間抜けすぎ、っていう話にはなるんだが…)。
原作が原作だから、っていうのもあるが、
今の日本の立ち位置で日本を舞台に映画を撮ってくれたこと自体に、
ある意味感謝しないといけないかも…。

キングメーカー 大統領を作った男(☆☆☆☆)
モデルは金大中。
作中の話は、日本でその名が知られるようになる、
いわゆる「金大中事件」以前の話で、
その頃の韓国のことを知らないワシにとっては
新鮮に受け止められた。
正直、かなりどす黒いことを選挙参謀主導でやっているが、
ほぼ実話というのだから驚きだし、
軍事政権時代の事と割り切っているとはいえ、
50年ほど前の事なのだから、関係者が存命の可能性もあろうに、
フィクションぽくしているとはいえ、
こうやって表に出せるのは、日本ではちょっと考えられないかな。
報道自由度ランキング43位の国は、
やはり71位の国とはちょっと違うな、と思う。

AKAI(☆☆☆)
現役ボクサーである赤井英五郎監督が、
ボクサーとしては大先輩である、
父赤井英和に迫る(?)ドキュメンタリー映画。
ワシも赤井英和の現役時代は知らなかったので、
わかりやすく調子こいてたり、
小さいジムから世界を目指して有名コーチを招聘したり、
世界挑戦直前で躓く、というか生死をさまようとか、
俳優始めるまでがすでに十分すぎるぐらい波乱万丈なので、
今わりとにこやかに俳優やってるのが、
にわかには信じられないぐらいなんだが…。
逆に言えば、生死をさまよったことにより、
「生まれ変わった」というか「命をもらった」ぐらいの感じで
生活してらっしゃるのかも。
明石家さんまの名言に「生きてるだけで丸もうけ」というのがあるが、
赤井さんが言う方が何倍も説得力あると思う。

復讐は私にまかせて(☆☆)
観たかったアクションシーンが、前半でほぼ終わってしまうのが、
とにかくザンネン。
基本構造はラブロマンスなので、そう思って観た方が良いが、
それにしてはバイオレンスなシーンが多いし、
内容が甘口ではないので、どっちにしても中途半端な作品かも。
アクション好きなワシとしては、
序盤のノリで最後まで行って欲しかったんだが…。

ビースト(☆☆)
画的には面白い感があるんだが、
「どうせライオンとかフルCGなんでしょ?」とか思って観ちゃうと、
もう全然ダメ。
ただ、「スポーツハンティング」が欧米やアフリカの
一部富裕層にとって「至極の娯楽」になってるという現実について、
数年前から映画という形でネガキャンしてる、
というのは何となくわかる。
悪い言い方をすると、ただそれだけの作品。

グッバイ・クルエル・ワールド(☆☆☆)
エンタテインメントに特化した映画なんだろうけど、
それぞれの要素が他でだいたい間に合ってしまってるので、
ただただ「cruel」、すなわち「残酷」なだけの作品。
「劣化ハリウッド映画」にすらなり切れてないのは、
人間関係の描写とかが実は薄っぺらからなのかも…。

人質 韓国トップスター誘拐事件(☆☆☆)
これこそ「劣化ハリウッド映画」だが、
多分本家ハリウッドではこのシチュエーションは成立しないだろうなぁ。
アクション映画としては悪くないが、
韓国映画は「たくさん観てるだけ」のワシとしては、
ファン・ジョンミンにそこまで思い入れが無いので、
「B級アクション映画」としての評価しかできない。

アルピニスト(☆☆☆☆)
多くの人々が自分の名前を売ることに汲々としてる中、
それでも「無名の天才」というのは存在するものである。
ただ、やはり放つ光が強すぎたのか、
どうしても見つかっちゃうんだよねぇ、現代においては。
その純粋さゆえに、明らかに文明人が持ち合わせてるであろう
ネジがおそらく10本単位で飛んじゃってるクライマー
(彼らはだいたい安全に関するネジが数本飛んでるわけだが…)である
マーク・アンドレ・ルクレールその人である。
ラストも含めて、とにかくいろいろと衝撃的であるが、
ある意味、紹介すべき、いやされるべき人物になったことだけは確かである。

ヘルドッグス(☆☆☆)
まず、「映画界の日本警察だいたい間抜け説」を改めて提唱したいレベルの内容。
まぁ、「グッバイ・クルエル・ワールド」ほど破綻はしてないものの、
「岡田准一Sugeeee」なだけの作品とも言える。
まぁ、それで良いっちゃあ良いんだけどね…。
あと、金田哲は原田眞人監督のお気に入りリスト入りしたかな。
ただ、扱いは相変わらず。

渇きと偽り(☆☆☆☆)
ミステリー映画としての出来は悪くないが、
大事なトリックが英語力無いと理解不可能なので、
そういう意味ではハードルの高い作品。
ただ、「ムラ社会」の怖さとかは日本人でも理解しやすいし、
「家庭内暴力」が表に出にくいのも理解しやすいだろう。
そういう要素にフォーカスすれば、充分今作の魅力は堪能できるだろう。

劇場版 山崎一門 日本統一(☆☆)
セルDVDで50巻以上出てる「新Vシネ」シリーズの映画版。
10月から北海道を舞台に深夜ドラマやるからなのか、
札幌で1週間限定公開されていた。
昨年、暴対法以降のヤクザ業界を描いた佳作映画が
立て続けに公開されたので、
この業界の映画はほぼ出尽くしたかと思われたが、
今作はほぼほぼ「ファンタジー」で、エンタメ色が強い。
「頼れるアニキ」的なキャラクターが多い一方で、
コンプレックスのクセが強いのも特徴だが、
そうなると好き嫌いが逆にはっきりしてしまうわけで…。
ワシはこういう路線あんまり好きではないかも…。

LAMB ラム(☆☆☆)
いろいろ狂ってると言えば狂ってるが、
画づらが「現代の寓話」的なので、
「まぁ、そういう愛の形もあるか…」と思って観てたんです、
あのラストを見るまでは…。
「そうか…、そういう世界なのか…」と思うと同時に、
「やっぱり人間だけがそんなに偉いわけじゃない、これは自然からのしっぺ返し」
と解釈するワシ。
評価しにくい性質の作品ではある。

霧幻鉄道(☆☆☆)
2011年の豪雨により、橋梁や路盤が流出、不通となっていたJR只見線。
北海道なんかの状況を見れば、このまま廃線も充分あり得た話だが、
今作では地元の働きかけにより「上下分離方式」によるとはいえ、
この度全線復旧を果たすまでの、地元からの働きかけを追ったドキュメンタリー。
ただし、今作ではコスト面からのアプローチではなく、
「観光資源としての只見線」にフォーカスが当てられている。
まぁ、生活路線としての存続ならバス転換でいい、と
JR側からは言われていたようなので、
「稼げる路線」というアピールをしないと鉄路としては残せないだろうなぁ。
ただ、それにしたって沿線自治体の協力無しには成立しないわけで、
沿線自治体の多くが始めから「厭戦ムード」な北海道に比べたら、
まだしも士気が高かったことが存続のカギになったことは、
今作を観れば理解できるだろう。

スーパー30 アーナンド先生の教室(☆☆☆☆☆)
インド映画では珍しい(個人的見解)実話ベースの作品。
でも、ちゃんとインド映画してるし、
内容もいろんな意味で充実してる。
「ドラゴン桜」っぽくもあるけど、
主人公のアーナンド先生の挫折もあったりするし、
しかも現在も生きてて今も無料学習塾やってるみたいだし、
とにかくいろいろためになる作品。
中国もそうだが、勢いのある国の映画は違うなぁ、と思う。

島守の塔(☆☆☆☆)
昨年ドキュメンタリーで観た、戦時最後の沖縄県知事島田叡(萩原聖人)と、
現地にある「島守の塔」にともに納められている、
当時の警察部長荒井退造(村上淳)の戦中を追う作品。
島田叡のことは、それこそドキュメンタリーで予習済みだったので、
比較的入りやすかったが、
その島田とともに献身的に働いた荒井も
家族ぐるみで沖縄に渡っていたこともあり、
いろいろとつらい体験をしながら沖縄県民のために働いていたことがよく分かった。
何よりも、最近Mリーガーとして奮闘してる
萩原聖人の俳優としての仕事ぶりが見られたのが良い。

クリーン ある殺し屋の献身(☆☆☆)
公式HPでも言ってるように「レオン」的な内容。
まぁ、そういうのが透けて見えてる時点でお察しなのだが、
基本的にアクション映画なので、
ストーリーは取ってつけた程度でもOKではある。
でもそれは、アクション映画として観応えがある作品だけ
そう言っていいわけで、今作はそういう意味では、ちょっとアレかな。
全体的な雰囲気は悪くないんだけど、
もう少し個々のキャストのストーリーを深掘りした方がよかったかな。

【1か月遅れ】鑑賞映画レビュー 2022年8月分 2/2

ウラギリ(☆☆)
カネの話は人間関係を崩壊させるだけだから、
よほど金銭的にも精神的にも余裕のある人じゃない限り、
特に「お金貸して」なんて言っちゃダメだね。
言われた方も、「貸すぐらいならあげる」感覚で出さないと…。
でも、今作の本質はそこじゃないし、
借りた方も貸した方も正直どうでもいいぐらい
醜悪な「ウラギリ」が、ラストで展開される。
そんな話にしちゃうの、ちょっとひどくない?

連鎖(☆☆☆☆)
「流浪の月」的な作品と言えなくもないが、
主人公の男性(今作ではソック)が抱える闇はある意味今作の方が大きい。
「正義」とは、結局のところ個々人の価値観の一部でしかないし、
今作では「先入観」も相当な悪さをする。
丁寧に聞き取りをすれば解決できたかもしれない事件だが、
「ソックは知的障害があるからまともに答えられるわけがない」
「ウンジは虚言癖があるから信用できない」といった
先入観を刷り込まれているせいで、
みんなまともに取り合おうとしない。
そのうち、周りの正義だけが暴走して、
ソックやウンジはだんだんと追い詰められていってしまう。
いろいろと考えさせられる作品。

バイオレンスアクション(☆)
「アライブフーン」のところで書いたように、
邦画とガンアクションは基本的に相性が悪い。
なぜなら、今作のように「玩具感丸出し」の「カルい」映画になってしまうから。
とはいえ、「ガンパウダー・ミルクシェイク」の例もあるように、
「ナチュラルパワーの差を埋める道具としての銃器」としては、
確かにそれなりに機能してるので、
ちゃんと扱えていればな、劣化「ガンパウダー・ミルクシェイク」ぐらいまでは
行けたかな、とも思うが、それにしたって公開タイミングが悪い。
あと、後述もするが、日本で「殺し屋稼業」が成立すると思ってるヤツらって、
正直どうだろうと思う。

戦争と女の顔(☆☆☆)
ある意味では、こんな優しい映画が作れるロシアという国が、
隣国に対して大人げない侵略をしているという事実。
作中の女性たちも、戦場で苦しい経験をしてきたであろうに、
それを現代においてまた引き起こそうとしている、
あるいはもう起きてしまっているのである。
「文化」や「芸術」には強い力が、なるほど有るのかもしれない。
しかし、それに感化されない人間というのも、また間違いなく存在するわけである。
まぁ、そういう意味では戦後生まれのプーチンにとっての
「戦後」は終わってないのかもしれないし、
「次の大戦」が起こらない限り「戦後」は終わらないのかもしれない。
人類の英知は、その悲しい連鎖を止めるすべを持たないのだろうか。

アウシュヴィッツのチャンピオン(☆☆☆☆)
あの「アウシュヴィッツ」で生き残ったというのだから、
それだけでも奇跡的なのに、
その前後のストーリーも含めて、まさに波乱万丈な人生を送った、
ある実在のボクサーの物語。
こういう、わかりやすいエンタテインメントって大事よねぇ。
しかも、ファイトマネーがわりに食料や医薬を手に入れ、
勝ち続けるその姿は、なるほど他の囚人にとっても希望の光となったに違いない。
ラストで語られる、生還後の人生も素晴らしく、
見事に良き人生を勝ち取ったと言ってもいいだろう。
もちろん、場所が場所なので、悲しい別れもあったが、
明日は我が身と思いながらも必死で生きる姿は、やはり素晴らしい。

超伝合体 ゴッドヒコザ(☆☆)
あの河崎実が、新たなる金脈を発見したようである。
「地産地消ムービー」とでも言うべきか、
河崎氏が長年身に着けてきた特撮技術で、
一つの街をフォーカスして作品を作る。
北海道民なら大泉洋も出演した「雅楽戦隊ホワイトストーンズ」に
近いノリを見出すこともできそうだが、
そこはさすが河崎氏、一枚上手である。
まず、特撮技術がいちおうちゃんとしてる。
そして、ちゃんと社会風刺も入れ込んでくる。
ただ、それらが社会に訴求するかというと…、なのではあるのだが…。
まぁ「地元密着演歌」だって、そうそうドカンとは売れないわけだから、
こういうものだと割り切って、
好きな人は観ればいい、ぐらいの評価に落ち着くわけだが…。

歩いて見た世界 ブルース・チャトウィンの足跡(☆☆☆)
考古学者から紀行文学者となったブルース・チャトウィン。
作品に触れたことはないが、
ある意味憧れの生き方ではある。
Google等で簡単に何でも調べられるようになったこの時代においても、
やはり本当の自分の感想は、自分で現地に行ってみないとわからないものである。
彼は、考古学者らしくそこからさらに2段も3段も掘り下げて、
「ソングライン」というアボリジニ研究の大著なんかも書き上げている。
そんな彼と親交のあった、ヴェルナー・ヘルツォーク監督を通してではあるが、
そういう面白い人物の人生に触れることができる。
そして、観たらきっと旅したくなる作品。

クリーチャー・デザイナーズ(☆☆☆☆)
「超伝合体 ゴッドヒコザ」もそうだが、
空想世界やSF世界を描くに当たって、特撮技術は必要不可欠なものである。
「ゴッドヒコザ」では、もちろん着ぐるみが使用されているが、
他にもミニチュアモデルや、
一部分だけを成功に作ったもの、
動かし方にしてもコマ撮りやワイヤーアクションなど、
CG全盛と言われる時代においても多岐にわたる。
もちろん、「ジュラシックパーク」以降のCG技術の進化によって、
メインストリームから若干外されてる感があるのは否めない。
しかし、まったく不要になったわけではなく、
「フィルムかデジタルか」の論争のように
風合いを残すために両方使ったり、
その濃淡は制作側の思い一つのようである。
一方、CG技術のそれほど進んでいない日本では、
「ゴッドヒコザ」や「平成(以降)ライダー」シリーズのように、
着ぐるみが主でCGが従みたいな作品がまだまだ多い。
どのあたりまでを主戦場として見るか、というところも、
その辺りの選択を左右してくるんだろうが、
やはりどうにも野心が無いというか、なぁ…。

プアン/友だちと呼ばせて(☆☆☆)
「マッハ!」以降、ワシも少しずつ注目するようになったタイの映画だが、
「女神の継承」といい、今作といい、
最近輸入される作品のバリエーションが増えてきた印象。
展開の仕方が香港映画っぽく見えるのは、ワシだけか?
今作は、ワシがあまり得意としていない恋愛絡みの作品だが、
タイトル通り旧交を温める(だけでもないんだが)作品でもある。
画作りが特徴的な作品でもある。

NOPE/ノープ(☆☆☆☆)
ワシ的には「ウルトラQ」的な作品に映った。
この監督さんは、雰囲気作りがとにかくうまい。
「アス」もそうだったが、今作も全体に漂う雰囲気はとにかく不穏。
何が起こっても不思議じゃないけど、何が起こるのかワクワクするワシもいる。
予告編の出し方とかとも関連してくるのだろうが、
魅力の見せ方がやはりうまいのだろう。
「ウルトラQ」を引き合いに出したように、
その気になれば日本でも作れそうな感じを受けるんだが、
「クリーチャー・デザイナーズ」のところでも書いたように、
興行側がどのくらいまでを対象にしてるのかで、
こういう作品を作るのか作らないのか、っていうのが決まっちゃうからねぇ…。
テレビ界もそうだけど、内輪ネタだけじゃぁこの国も縮小再生産しか
なくなっちゃうんじゃないかねぇ…。

インフル病みのペトロフ家(☆)
コレはねぇ…、内容も構成も複雑すぎたなぁ…。
鑑賞してから1か月も寝かせてしまったので、
もうあんまり説明もできないんだよねぇ。
ただ、見返して理解を深めようっていう気にもならないし…。

アキラとあきら(☆☆☆☆)
打って変わって、構成のうまさが光る作品。
もちろん、「話が出来過ぎ」とか
「キャスティングで話の展開が予想できてしまう」とか、
邦画の悪いところが出てきてはいるだが、
こういう痛快な話はたまに摂取しておかないとね…。

グリーンバレット(☆☆)
キャラクターの造形とかは今っぽいが、内容が、ねぇ…。
9月分でレビューする「ブレット・トレイン」もそうだが、
日本で殺し屋稼業が成立するとは、やはりどうしても思えないんだよねぇ。
逆に、今こそ「ザ・ハングマン」的な社会的制裁的な方法論の方が、
リアリティがあるような気がするんだけど…。
だいたい、殺し屋用の合宿所とか、
あんな武器庫みたいなもんをこっそり作れるほど、
この国は簡単に火器取引ができる国じゃないと思うんだけど…。
そういう意味では、やはりフィクションで描かれるこの国の警察機構は、
どうにも「おまぬけさん」が多い気がするんだが…。
あと、やっぱり銃の扱いに違和感がありまくり。

義足のボクサー GensanPunch(☆☆☆☆)
義足ゆえにJBCからプロライセンスが下りなかったため、
フィリピンでプロボクサーになった日本人をモデルにした、
フィリピンの映画作品。
日本では名前しか見ることができない「HBO」がバックアップする作品。
フィリピンでボクシングといえば、やはりパッキャオが有名だが、
今作を見る限り毎週のようにボクシングの試合がどの辺の公園とかで
行われてる印象で、裾野の広さを感じる。
そして、あまり良くないと考えられる「八百長」の扱い。
今作では、主人公に内緒でトレーナーが対戦相手に
カネを積んで「負けてくれるように」頼むシーンがある。
試合後、それがバレてトレーナーは主人公になじられるわけだが、
トレーナーが八百長を持ち掛けたのは、
「怪我せずプロライセンスを無事に取れるようにするため」
であると説明する
(日本人らしい気風の主人公は、
「俺は正々堂々と勝ってプロライセンスを勝ち取りたかったのに…」
と言ってトレーナーを突き放すんだが…)。
相撲界も「八百長撲滅」を謳ってからずいぶんとケガ人が増えている印象がある。
純粋にスポーツとして考えた場合、
当然「八百長」は許されるものではないが、
一方で、もともと「真剣勝負」の語源から考えると、
敗北はややもすれば死を意味するし、
死なないまでも再起不能に追い込まれるケースは少なくないだろう。
それを考えれば、特に興行的側面の強い大相撲なんかは、
「八百長」にそこまで目くじらを立てることも無かったのでは…、
とも思うのだが、存外そう見てない人が多いのかな、やっぱり…。
主人公の生きざまともども、いろいろと興味深い作品。

【1か月遅れ】鑑賞映画レビュー 2022年8月分 1/2

実は28本も観ていた8月。
後でまとめて書こう…、なんて思ってたら、
すっかり延び延びになってしまい…。
書ける時に書き溜めておかないと、だねぇ…。
数が多いので2分割で。

バッドマン 史上最低のスーパーヒーロー(☆☆)
やっぱり、スタッフの名前とかに釣られて観るとロクなことが無い。
とにかく下品。
「シティーハンター」は「週刊少年ジャンプ」内でも
大発明と言える「エロいけどエロくない」を体現した作品だが、
フランス映画界でもどうやらそうだったらしい。
かといって、完全にダメじゃないところがまた…。
日本でこういう感じの作品やろうと思ったら…、
多分企画も通らないと思うけど、
通ったとしてもクッソつまんないのが出来てくるんだろうなぁ…。

ジュラシックワールド 新たなる支配者(☆☆☆)
最後だからと思って観てきたが、
今までなんで観に行ってなかったのかすっかり思い出してしまった。
結局このシリーズって、「キングコング」シリーズとかと同じく、
恐竜とかを見世物にしたら制御できなくなって…、
っていうだけの作品。
このシリーズは、早くから遺伝子操作とかの話をしてたから、
今作では巨大イナゴとかが世界中の食糧を食い尽くす、
みたいな展開もあるんだけど、
それって遠からず人間がやってしまう可能性だってあるわけだし…。
欧米人は、やっぱり「自然派支配するもの、あるいは支配できるもの」と
考えてるようだが、日本人はアイヌとかもそうだけど、
「自然のご機嫌を伺い、折り合っていくもの」と考えてるので、
こういう作品世界には本当のところなじめないと思うんだよねぇ。

アプローズ、アプローズ!(☆☆☆☆)
崖っぷち役者と服役者が、
演劇を通じて自分たちの居場所を模索する、という
スウェーデンの実話を基にしたフランス映画。
「バッドマン」に比べたらすごくお上品な作品
(そもそも比べるな、という話もあるが…)。
与えられた場所に居場所をなかなか見つけられない彼らが取り組む演劇が、
存在意義を問う不条理劇の「ゴドーを待ちながら」というのが、
また興味深いわけだが…(まぁ、ワシは「ゴドーを待ちながら」観たことないですが)。
ラストは…、まぁそうだよね、と言えなくも無いが、
実際服役者のその後はわかっていない。
矯正教育という意味で言えば、この手法は失敗だったと言わざるを無いが、
北欧ではまた異なるアプローチの刑務所もあるので、
相変わらず模索しているということなのだろう。
対する日本は…、いろいろ硬直的だからねぇ…。

教育と愛国(☆☆☆)
主に「道徳教科書」と「歴史教科書」の問題を取り上げているが、
レビューを書き損ねてる間にこの辺に関わりのありそうな問題が
起こってしまってるので、今作に関してはわりと一般的な話だけ。
「道徳教育」に関しては、森友問題ともに「愛国心」教育の扱いで
ディベートやりたがらない(というか、論争の状況そのものに日本人が耐えられないのだが)
日本人からすると、「価値観の押し付け」につながりかねない
(実際、戦前の「修身」では価値観の押し付けになってしまったのだが…)。
「歴史教育」についても、結局戦前や戦中の描写に問題が出てしまったことが原因なのだが、
そもそも以前から現場では「腫れ物」扱いで、
それ以前の期間をまったり授業して戦中の授業は教わってないと、
少なくとも昭和50年生まれのワシは記憶している。
今年観に行った「松代大本営」で起きた事などを見ても、
教科書の内容が事実を少なからず歪曲していることが見て取れるわけだが、
「道徳教育」と繋げて見ても「戦前回帰」と捉えられても仕方ない面はある。
そもそも「教科書検定」自体が「国家による価値観の押し付け」に
繋がる危険性をはらんでいるわけだから、
そこの運用はもっと慎重にならないといけないのに、ねぇ…。

女神の継承(☆☆☆☆)
平凡な「タイ発のホラー映画」とは一概に言えない。
というのも、タイ北部の民族と結びつき、
また「チェイサー」などの監督作があるナ・ホンジンがプロデュースし、
ナ・ホンジンの母国韓国の習俗や、
日本の習俗とも近いものを感じさせてくれるかからだ。
「ムーダン(「聖地X」にも出てくる)」「鬼道」「陰陽道」など、
この辺りが混然一体となっているのがアジアの習俗の本当のところだと思ってるので、
怖いけど興味深い内容だった。
ちょっと大げさに言えば、「ジュラシックワールド」のところでも書いたが、
「人間と自然の対峙」にも通じる。
そういう意味で言えば「貞子DX」ってまた違う意味での逞しさを感じる
(まぁ、観ないけど)。

L.A.コールドケース(☆☆☆)
「白塗りしてないジョニー・デップ出演作」はやはり当たらない、
というか、ジャーナリスト(フォレスト・ウィテカー)と元刑事(ジョニー・デップ)という、
捜査権限の無い2人がいくら事件をほじくり返したところで、
公権力に握り潰される新事実しか掘り起こせないわけだから、
ラストに爽快感を求めるのにはそもそも無理がある。
そういうわけで、基本的には過程の緊張感を楽しむ作品。
「MINAMATA」のジョニー・デップもそうだったが、
本来こういう影のある人間をうまく演じるだけの演技力がある俳優。
離婚騒動でよりイロモノ感が出てしまってるのが気がかりではあるが、
「白塗りしてない」ジョニー・デップ、キライじゃないですよ。

長崎の郵便配達(☆☆☆)
今作で一番びっくりしたのは、
「ローマの休日」にモデルとなる人物がいたんだぁ、という点。
その人は、ピーター・タウンゼント。
大戦中は英国空軍のパイロットをやっていて、
当時の英国王ジョージ6世によって侍従武官に任じられた時に、
マーガレット王女(先ごろ亡くなられたエリザベス2世の妹)に見初められたが、
当時既婚者でのちに離婚したピーターを王室に入れるわけにはいかなかったようで、破局。
この辺りのエピソードや、ピーターがジャーナリストをやっていたことから、
「ローマの休日」のモデルとなったのだろう。
で、そのジャーナリスト時代に長崎を訪れ、
被爆者の谷口稜曄(タニグチスミテル)氏を取材し、のちに小説を出版する。
今作は、ピーターの娘と今作の監督である川瀬美香女史との出会いによって生まれた映画。
内容的にはロード―ムービー的で、
「長崎に行ってみたいな」という気持ちにこそなるが、
原爆に関するメッセージ、という意味ではヒロシマ系の生々しいのとは違って、
かなりマイルドな感じ。
「家族の物語」として観るのが正解か。

1640日の家族(☆☆☆☆)
コレも実話系のフランス映画。
今作のの監督さんは、今作で言うと実子の方の立場で
今作のようなシチュエーションを経験したんだそうで、
現在40半ばの方だそうなので、
フランスの里親制度は多様化の歴史を歩んできたことがうかがえる。
受け入れ側からすると「悲しい別離の話」としてもっとフレームアップもできるんだろうが、
今作の主役はある意味「里子」の方であり、
フランス国家としては「実親の元に戻る」ことがやはり究極の目標なのだろう。
そういう意味では、今作の里親は「やりすぎた」と見ることができるし、
多様な視点が用意されている今作はゼイタクな作品ともいえる。
気持ちいい映画ではないが、興味深い作品ではある。

GレコⅤ(☆☆☆)
いよいよ大団円。
月や金星圏まで巻き込んだ大戦争(?)のクライマックスが、
結局一騎打ち、というのが富野作品らしいと言えばらしいのだが、
終わり方含めて「小ぢんまり」とした印象を受けてしまうのは、
「宇宙戦艦ヤマト」シリーズや「銀河英雄伝説」を通った後だからかも。
ネアカな作品で観た後の爽快感はあるのだが、
今作以降の世界が抱える現実は、正直観たくないかも…。

アライブフーン(☆☆☆)
CGにカネかけられないんだったら、
カメラ台数をゼイタクに使って、画像処理は最低限にして、
本物志向で撮った方が成功するのでは、と思わせる作品。
ただ、ツッコミどころは少なくない。
実際、Eスポーツ出身のレーサーも実在するので、
今作の視点自体はそこまで新しくもないのだが、
ヘタにCG使うぐらいなら実写化はあきらめて「アニメ映画」にするか、
今作のように徹底的にリアル志向に走った方が
(単にわしがダマされてるだけかもしれないが)、
日本映画は面白そうな気はする。
そういう意味では、やはり日本映画に銃器は似合わない。
リアルに扱える人間が少なすぎるから。

こどもかいぎ(☆☆☆)
「教育と愛国」のアンサームービーになりうるかもしれない作品。
「議論という状況に耐えられない日本人」が生まれる原因の一つは、
そもそも「自分の意見を言う機会を与えられずに大人になった」からとも言えるので、
今作の取り組みのように幼少期から「とにかく自分語りする機会を作る」のは、
議論慣れするという意味で意味がありそうではある。
もちろん、今作で扱うのは保育園児なので、いろいろと拙い面はあるが、
実際に見る大人たちの議論はもっと醜いので、可愛げがある分ましと言えるかも。
「戦わないための戦い」に備えるうえで、今作は間違いなく一助となるだろう。

炎のデス・ポリス(☆☆☆)
ザ・B級アクション映画だが、痛快な展開で気持ちいい。
主役の新米女性警官が、地の利を生かして
クセモノたちと渡り合うんだから、面白くないわけがないんだが、
あまりにもB級臭が強すぎて、薦めにくいかな。

野球部に花束を(☆☆☆)
キャラが濃いな、と思ったら、マンガ原作(月刊少年チャンピオン)だったのね。
先輩部員が「小沢仁志」に見えちゃうのは、Vシネの観過ぎでは…?
里崎さんの豆知識も悪くないが、
今作では某地上波番組の「メンドクセー奴」高島政宏が輝きまくってる。
高島兄弟って、いつからこんなクセモノばっかり
(弟さんは「ちむどんどん」ではそれなりに常識人の役だったみたいだが)
演じるようになっちゃったんだろうかねぇ…。
内容は、昔の体育会系部活あるあるなんだけど…、
「昔の」って片づけられるんだろうか、ホントのところ…。

ファイナルアカウント 第三帝国最後の証言(☆☆☆)
「教育と愛国」で、戦前回帰的な考え方が日本に戻りつつあると感じたが、
ナチスのお膝元だったドイツにもそういう傾向があるようで…。
そういう意味では、やはり「幼少時からの教育」の効果というのは
絶大なものなのだと改めて実感させられる。
もちろん、いいメを見てきた一方、戦後鬱屈した日々を送ってきた事への
揺り返しみたいなものもあるんだろう。
世界情勢は100年前に戻りつつある。
その時、戦前の教育を抱えたままの彼らは、
社会の中で責任ある立場であることが少なくないだろうが、
いかに向き合い、いかに立ち回るのだろうか…。

【備忘録】「勝手に映画賞」目次

2008年 ユウマの 「2008 勝手に映画賞」: 「新・中央競馬予想戦記」とかいろいろ (cocolog-nifty.com)

2009年 2009 勝手に映画賞: 「新・中央競馬予想戦記」とかいろいろ (cocolog-nifty.com)

2010年 2010 勝手に映画賞: 「新・中央競馬予想戦記」とかいろいろ (cocolog-nifty.com)

2011年 2011 勝手に映画賞: 「新・中央競馬予想戦記」とかいろいろ (cocolog-nifty.com)

2012年 2012 勝手に映画賞: 「新・中央競馬予想戦記」とかいろいろ (cocolog-nifty.com)

2013年 2013 勝手に映画賞: 「新・中央競馬予想戦記」とかいろいろ (cocolog-nifty.com)

2014年 2014 勝手に映画賞: 「新・中央競馬予想戦記」とかいろいろ (cocolog-nifty.com)

2015年 2015 勝手に映画賞: 「新・中央競馬予想戦記」とかいろいろ (cocolog-nifty.com)

2016年~2018年 2019年、映画レビュー復活させます&まとめて「勝手に映画賞」: 「新・中央競馬予想戦記」とかいろいろ (cocolog-nifty.com)

2019年 2019「勝手に映画賞」&映画反省&今札幌の映画館に起きていること: 「新・中央競馬予想戦記」とかいろいろ (cocolog-nifty.com)

2020年 2020鑑賞映画一覧&2020「勝手に映画賞」など: 「新・中央競馬予想戦記」とかいろいろ (cocolog-nifty.com)

2021年 2021「勝手に映画賞」など: 「新・中央競馬予想戦記」とかいろいろ (cocolog-nifty.com)

鑑賞映画レビュー 2022年7月分他

ゴースト・フリート(☆☆☆)
現代の「蟹工船」は、自ら飛び込むのではなく、
拉致され、あるいは騙されて乗せられるもののようである。
そして、そうやって不当な収奪によって捕られた魚介が、
実は缶詰や魚粉、ペットフードとして堂々と流通しているようなのである。
今作では、そういった現代の「蟹工船」の現実と、
そこから人々を救い出そうとするNPO団体の活動を追う
ドキュメンタリーである。
ただでさえ、水産資源の枯渇が騒がれている時代である。
このような不当な手段で知らず知らずに水産資源が収奪されているとすれば、
これはとても他人事では済まされないだろう。
しかも、この船で働いている人々には賃金が支払われていない。
これは労働力の無駄遣いであろう。
一方で、海の上には国境も無いし、船の上は孤島のようなもの。
いわば国際的無法地帯ともいえる場所なわけである。
それこそ、国際協調で取り締まらなければいけないところだろうが、
時節柄、そううまく行ってないんでしょうねぇ。
このNPOの活動には、要注目だろう。

モガディシュ(☆☆☆)
国連加盟を目指す南北朝鮮がアフリカで活動していた頃に、
「ブラックホーク・ダウン」でもおなじみ
ソマリア内戦に巻き込まれ、
まさに「呉越同舟」するという史実に基づく話。
日々の生活に汲々とするアフリカ庶民からしたら、
資本主義だ社会主義だといったイデオロギーでもめている様は、
滑稽というより些末な差でしかないのだろう。
「政府に手を貸すヤツは全員敵」と言わんばかりに、
各国大使館に「国外退去、さもなくば死」を突き付けてくるのである。
しかし、ココである意味「韓国映画のうまさ」さが冴えわたる。
左派の文在寅政権下で作られたこともあってか、
綱渡りながらうまく立ち回っており、
その辺りの緊張感ある演出には観るべきものがある。
政権におもねるわけではないのだろうが、
オバマ政権時も黒人絡みの映画がずいぶん出てきたように、
政権の発信したいものを発信すれば、
なにがしかの利得もあるというものであろう。
まぁ、海外公館に行ってワインを買い占めたり捨てたりするどっかの国とは、
一味違うことは確かである。

ザ・ロストシティ(☆☆)
ザ・無駄遣い。
ある意味、実に日本的な発想のアクション映画と言えるかも。
あえて言うならウザいモデルのアラン(チャニング・テイタム)の
成長を見ていく物語。
他には何にもありません。

ナワリヌイ(☆☆☆)
21世紀にもなって、世界を敵に回して戦争を仕掛けるほどの
怖いもの知らずと言ってもいい、プーチンロシア大統領。
そんな彼ですら、名前を口にしたくない、
「ロシア反体制派のカリスマ」アレクセイ・ナワリヌイのドキュメンタリー。
それほどの存在だから、毒殺されかけたわけだが、
今作の凄いところは、九死に一生を得た彼自身が、
容疑者に電話をかけるなどして真相を暴き出す、というところ。
「有名になったら簡単には殺されないだろう」と思って、
せっせと発信し続けていた彼からすると、想定外だったようだが、
ロシアは、いやKGB出身のプーチンは、そういう男なのである。
その辺りも含めて、すっかり100年前の景色に逆戻りした世界情勢だが、
ナワリヌイはそこにくさびを打つことができるのだろうか…。

バズ・ライトイヤー(☆☆☆)
日本のこういったフィギュアがそうであるように、
こういうおもちゃに心惹かれ、購入するには、それなりのストーリーがあるだろう。
それがまさに本作であろう、とは思うのだが、
本国アメリカではあまり評判が良くないようで…
(内容に問題がある、と言えばあるんだが…)。
確かに、あまり子供向きの内容には見えなかったが、
ワシ自身「ガンダム」で育ってきた世代だし、
富野由悠季氏も「子供向けだからって子供だましなものは作らない」
と言ってるように、子供は案外見抜いてしまうものなのである
(そういう意味ではアンディ少年は「聡明な子」なのかもしれない)。
評価しにくい、と言えばしにくいが、そこまで悪い映画とは思えないんだが…。

男たちの挽歌(リマスター)(☆☆☆)
ジョン・ウーが創造したと言っても過言ではない
「香港ノワール」の決定版ともいえる今作。
隔世の感のある設定ではあるが、
あいかわらず「カッコいい」映画であることは確か。
そして、ハトはともかく二丁拳銃はこの頃から健在。

FLEE/フリー(☆☆☆)
言ってみれば「ねほりんぱほりん」方式の今作。
内容は充分生々しいが、
良くも悪くもアニメ化されてることによりマイルドな仕上がり。
難しいテーマをいろいろ内包してる作品なので、
観客を選ぶ作品ではあるが、何も人の悩みは一人に一つとは限らないので、
受け止める覚悟は必要だが、こういうのに一発殴られるのも悪くないだろう。

エルヴィス(☆☆☆☆)
チラシに「ビートルズもクイーンもエルヴィスがいなければ存在しなかった」
とあおっている一方、
鑑賞前に「見世物の最終形態としてのエルヴィス」といったコラムを
なまじ読んでしまったせいで、ある意味独自の文脈と捉えることができたのは大きい。
この文脈だと、見世物小屋出身のトム・パーカー(トム・ハンクス)が
エルヴィスという素材でどう稼ぐかの方がよりフレームアップされるし、
より新しいエルヴィス像に近づけたような気がする。
まぁ、それ以前に「ワシ、エルヴィスのこと全然知らんかった」
ことを思い知らされるわけだが…(例:兵役に就いてたとか)。
韓国スターが同様のことに悩まされているようだが、
時代や立場が違うとはいえ、
あの立ち回り方はちょっと真似できないかも。
「彼を殺したのは誰か?」の答えは、含むものがいろいろあって興味深い。

ブラック・フォン(☆☆)
「死者との対話」、「予知夢」が物語のカギを握る、
「ザ・サイコスリラー」な作品だが、
言ってみれば「イット」の劣化版みたいな話なので、内容はそれなり。

ベイビー・ブローカー(☆☆☆☆)
内容、展開、バックストーリーの分厚さを観るにつけ、
いかにも是枝作品といった出来栄え。
こういう重い作品が、日本では作りにくくなったのかもしれない。
「日本映画界のドン」角川春樹が「制作委員会」を作ったと、
ある番組でやっていたが、
今となっては功より罪の方を問う声の方が大きいように思える。
確かに、多くの出資者を納得させるためには、
当たり障りのない作品が多くなるのは仕方ないだろうが、
海外みたいにファンド化するなど、大きなバジェットを個人的に得る方法が
この国には無い事は確かに大きい。
一方で、国が投資を推奨し始めてるように
(このこと自体は多分に打算を含んでるんだろうが…)、
そういうシステムが生まれてくるぐらいの危機感が、
映画界に無いのも問題のように思える。
このまま、例えば是枝監督が外国資本で映画を撮るようになれば、
それこそ「人材流出」となりかねないと思うのだが…。

マーベラス(☆☆☆)
女性を主人公に据えるアクション映画が欧米でも増えてきた。
今作は、登場人物こそ少ないが脇役や監督に大物を据え、
主演女優マギー・Qの出自にある程度寄せた感じの設定にしてるように見る。
なるほど大人の艶みたいなものを感じるが、
やることはそれなりにやってるので、観応えはある。
ただ、突き抜けた魅力が無いので、星の数は控えめ。

神々の山嶺(☆☆☆)
2016年の実写版は鑑賞済み(☆x3)。
ある意味やりたい放題なので、時代の空気感とかはこっちの方が上だが、
内面的な表現等がどうにもやり過ぎな感じ
(逆に邦画実写版はやらなさすぎというか表現力不足)で、
ちょっとシラケてしまうところもあった。
「実写だから良い」「アニメだから落ちる」とかは、
ワシの中では無いが、お互い悪い面がちょっと目立つので、
悪い意味で甲乙つけがたい、というのがホントのところ。
もしかしたら、「海外のビッグバジェットで実写化」が正解なのかも。

キャメラを止めるな!(☆☆)
原作は、ワシがレビュー書くのさぼってた時期に公開された作品。
当時の感想は、
「面白いが、1回嚙んだら味がなくなる」という感じのものだったと思う。
そういう意味では、海外リメイク版とはいえ
「もう味がしない」はずの作品を観に行ったわけだが、
やっぱりそんなに味はしなかったね。
基本構造全く同じだし(まぁ、そこもネタにするんだけど)。
そういう意味では、初見じゃない人の楽しみはもうそこしかないわけで、
ワシはそんなに楽しめなかった。

吟ずる者たち(☆☆☆☆)
最近の旅行では結構な確率で旅程に入れてる「日本酒の酒蔵」。
まぁ、そのぐら興味深く日本酒に触れてるわけだが、
そういうワシが見て日本酒に関する新たな発見が多かった作品。
なので、初めから万人に勧める作品ではないと思ってるが、
モノづくりの本質がいろいろ詰まってる作品ともいえる。

グレイマン(☆☆☆)
B級アクション映画の王道。
確かにサブスク(ネトフリ制作)で充分な作品と言えなくもない。
できる主人公と、派手だけどダメな悪役という構図。
この「派手さ」がある意味では大事なのだが、
派手であればあるほど「王道」で「ベタ」になるという、
致命的な矛盾を抱えてるわけで…。
ネトフリの勢いが落ちてるのも、なんかわかる…。
ワシは嫌いじゃないよ。

ポゼッサー(☆☆)
SFモノ、特に近未来モノでは、
「ほんとに起こるかも」と観客に思わせるのが重要だと思うんだよね。
でも、今作の場合システムに無理があるというか、
「回線切断の為には自殺しないとダメ」って言うのがねぇ…。
案の定、今作の主人公は「自殺して回線切断できない」ことに悩むので、
そのせいでコトがどんどん大きくなってしまう、というね…。
これを冷静に観始めてしまうと、全然作品世界に入って行けなくなるので、
評価としてはこのぐらいしか出せないかな…。

キングダムⅡ(☆☆☆)
五部作確定と言われてるこのシリーズ。
まぁ、それが見え透いてるとなると、今作はどうしても
繋ぎの作品感が強い。
ちょっと視点をずらすと、「羌瘣(清野菜名)のための舞台」
的な側面が大きい。
おそらく「キングダムⅢ」は相当大きな話になるはずなので、
そこに向けた超豪華キャストがラストに向けて目白押し。
アクションは悪くないが、特筆するべき何物も無い。
繋ぎと割り切って観る作品。

夜を走る(☆☆)
ダメな奴は、何をしても、何処に行ってもダメ、と思わせる作品。
だからと言って、小賢しく立ち回ってる奴もまた、
小賢しいところから抜け出せないんだが…。
結局、殺人の主体が分からないままだし、
モヤモヤさせられるだけで希望が無い。

海上48Hours(☆)
登場人物(サメも含めて)間抜けが多すぎてあきれるヤツ。
途中で生き残るヤツがだいたいわかっちゃうし、
スペクタクルも無いから、完全にタイトルに騙されたヤツ。
してやられた。

スープとイデオロギー(☆☆☆)
けっこう前に「チスル」っていう、韓国の黒歴史「済州島4・3事件」を扱った
映画を観たんだけど、
今作のタイトルのうち「イデオロギー」の部分は同じ。
ただ、「チスル」の主人公が、この事件に巻き込まれた
ノンポリの住民だったのに対し、
今作の主人公で今作の監督のお母さんは、
その両親が熱心な朝鮮総連(北朝鮮系)の活動家だったそうなので、
「チスル」的に言えば巻き込んだ側と言ってもいいだろう。
その辺りの視点の違いこそあるものの、
お母さんが当時まだ若かったこともあり、
また当時の韓国政府が「島民全滅もやむなし」という姿勢のせいで
(だから「黒歴史」扱いなわけだが…)、
だいたい同じメに遭ってるというね…。
ある意味、日本、韓国、北朝鮮それぞれの生き辛さを味わってるわけだが、
いい具合に中和されてるのが、お母さんが作る参鶏湯と、
監督さんのカレシとの交流。
歴史的ないきさつから長くお母さんが行くことができなかった済州島に、
文在寅政権になって入国できるようになったため、
そこに行くまでのロードムービー的な色合いもあり、
いろいろと興味深い内容ではある。


ボイリングポイント/沸騰(☆☆☆☆)
「全編ワンショット」という、超長回し作品。
とはいえ、あまりその点に今作の本質は感じない。
むしろ、従業員個々人にとにかく「余裕が無い」さまを、
エピソードとして提示されるため、
その緊張感を助長するためのエッセンスとして
「ワンショット」を選択した、と考えるのが自然かも。
フロアマネージャー2代目のお嬢さんのようで、
正直ガバナンスが成立してない。
一方、オーナーシェフは、忙しさゆえか妻子と別居中で、
しかもシェフ業以外に手が回っていないのか
特に店舗の衛生面に問題を抱えている。
そこに、面倒な客やオーナーシェフのライバルが
グルメ評論家を連れて来店…、と緊張の局面が続き…。
ラストはある意味衝撃的だが、
ある意味納得というか「残当」としか言いようがないというか…。
こういう人は、あんまり独立とか考えない方が良いんじゃないかな…。
組織人の悲哀を感じさせる作品。

GのレコンギスタⅣ(☆☆☆)
クライマックスのベルリvs.マスク戦は、
そこまでと筆致も違ってすごく気合を感じるが、
今回の主役はマニィだろう。
第5部も少し「富野由悠季の世界展」で予習したが、
彼女は実に健気。
その献身が第5部に波乱を巻き起こすことになるのだが…。
まぁ、そういう意味で言えば今作も
大団円に向けた繋ぎの回と言えるだろう。


サツゲキの引受先が決まったものの、
映画部門だけ別というのがやはり引っかかる。
ハナから「ダメならそこだけ潰す」戦略が透けて見えるわけだが、
引受先がゲーセンでおなじみ「GIGO」の会社なんだから、
まぁ仕方ないのかな。
そういう意味では、やはり当てにならない気はするのだが…。

鑑賞映画レビュー 2022年6月分

フォーエバー・パージ(☆☆)
こういうお話は、ちゃんとルールがあるから面白いんであって、
いくら前作以上の刺激を追求するためとはいえ、
実質ノールールにしてしまったら、ただの殺し合いでしかないし、
その醜悪さたるや…。
ゆえに救済措置として「タイムリミット」を設けて
無法地帯からの脱出を 目的とするわけだが…。
それは、もう「パージ」でも何でもない、
よくあるタイムリミットサスペンスでしかない。

わが青春つきるとも(☆☆☆)
無産政党の政治運動に身を投じ、
治安維持法で検挙され、獄中死した伊藤千代子の伝記映画。
予算の関係か少々アラの見える作品ではあるが、
こういう埋もれた人物を発掘するのは、
ある意味映画の使命であり、醍醐味であると思う。
各地の上映会はなかなか好評なようなので、
長く語り継がれる映画に育っていって欲しい、とは思う。

ドンバス(☆☆☆)
2014年にウクライナから一方的に独立したドンバス地方で、
それ以降に起こった出来事をもとに構成された
13のショートストーリーのオムニバス的作品。
フェイクニュースやプロパガンダといった虚実が入り乱れた
情報の洪水の中で、それに振り回されながらも生きていく
庶民の生きざまを活写している。
現在は、当時よりさらに状況は混迷していそうだが、
世界情勢含め今後どうなっていくことやら…。

機動戦士ガンダム ククルス・ドアンの島(☆☆☆☆)
ファーストガンダムにも携わった安彦良和氏が監督をやってるためか、
どこか懐かしさを感じさせる「最新のガンダム作品」。
そして、そこはかとなく漂う「富野イズム」。
一方で、マクベとゴップというジオン&連邦の高級幕僚の間で
話される内容がイマドキ過ぎて逆に笑えない。
このあたりのバランスが絶妙だし、見ごたえもしっかりある。

東京2020オリンピック SIDE:A(☆☆☆)
オリンピックのオフィシャル映画としては正統派の方。
今回新採用の競技以外はほぼすべて女子種目をフィーチャーしてるのは、
やっぱり監督が女性だから?
でも、日本てこういうのすぐに全力で消費しちゃうから、
そこまで目新しい話が出てくるわけでもないし、
むしろ後日上映の「SIDE:B」的な話が随所に登場。
まぁ…、避けられないよねぇ…。

オフィサー・アンド・スパイ(☆☆☆)
日本でいえば「森友問題」みたいな話だが、
そこは元ネタが19世紀末のフランス。
軍部内の問題で、その上人種問題も絡んで
事態はさらにややこしいことになっている。
解決まで実際には12年もかかっているが、
最終的には自浄作用が働いているのが救いではある。
翻って日本である。
いまだに自浄作用が全く働かず、すっかり逃げおおせてしまった。
こういう「不法」を働くヤツらに対抗するには、
ある意味「無法」を働くしかないわけだが…。

ワン・セカンド 永遠の24フレーム(☆☆☆)
最近は大作を作らされてずっこけてる感のあるチャン・イーモウ監督。
しかし、今作は大作とは言えないがほっこりさせてくれる佳作。
田舎って、日本もそうだけど娯楽なんて本当に少ないわけである。
今作のように娯楽を運んでくれる存在は、なるほど貴重なわけである。
今や配信で向こうからやってくる時代になったが、
現在だって「鑑賞」という体験自体の貴重さは失われていないと思う。
そういうことを改めて思い出させてくれる作品ではある。

チロンヌプカムイイオマンテ(☆☆☆)
1986年に屈斜路湖畔で行われた「キタキツネの霊送り(タイトルの邦訳)」の
模様を、現在のロケ地の模様を含めて追っていくドキュメンタリー。
相変わらずアイヌの文脈がいまいち理解できないのだが、
「首輪でつながれたキツネ」が「霊送り」を経て
「人間の世界は素晴らしい。みんなも行ってごらんよ」と
果たして誘うものなんだろうか…。
映像としては貴重だが、
この映像以降にアイヌから失われたものも少なくないだろうし、
祭祀の継承も今作のような映像無しには難しいだろう。
時代の風雪に、これ以上耐えられるのだろうか…。

バスカヴィル家の犬(☆☆)
チラシで「ホームズシリーズ最高傑作」と言われる原作を、
日本を舞台に再構成された今作。
でも、瀬戸内海の島を舞台にしてしまったことから、決定的な矛盾が発生。
傑作を映像化するんだから、
そういう細かい部分こそ丁寧に扱うべきなんじゃないだろうか…。
展開は確かにテンポよく進むが、悪く言うと端折ってると取られるかも…。

PLAN75(☆☆☆)
実行されたら国内で物議をかもすこと間違い無しの、
「満75歳から精子の選択権を与える制度」をテーマにした作品。
序盤の内容を見ると明治初期に行われた「秩禄処分」
(華族や士族に明治新政府が払っていた給与を差し止め、
代わりに一時金を払って事実上放逐したこと)を思わせるものがあるが、
その辺りの細かい制度設計が全く語られてないので、
ただ「最後の選択に向けた薄っぺらいドラマ」に落ち着いてしまった。
「生きることの意味」を問うには少々情緒的に過ぎる内容に思われた。

エリザベス 女王陛下の微笑み(☆☆☆)
今年在位70年を迎えるエリザベス2世の、初の長編ドキュメンタリー。
内容は、ある意味タイトル通り
「今までのアーカイブから女王の笑顔だけを切り出してくる」
ような内容。
彼女の気さくさは確かに伝わってくるが、
少々深掘りが足りないかな…。

峠 最後のサムライ(☆☆☆)
新潟で予習済み。
「ガトリング家老」とも言われる「知られざる英雄」
河井継之助の、最後の1年を追う作品。
まず、彼をちゃんと押さえてた「維新の嵐」の慧眼、
というか、シブサワコウは司馬遼太郎大好きなんだなぁ…、
と改めて思う。
「5万vs690」は確かに圧巻だが、
「300」とかも見てるし、「寡をもって多を制す」る、
兵法の邪道をことさら称賛するのはあまり良くないし、
むしろ抵抗の象徴として城というハードウェアに
こだわらざるを得ない状況を作ったのは、
戦略上の失敗だった可能性さえある。
しかも相手は話が通じない、功を焦る新政府軍。
河井の交渉力でも歯が立たず。
スイスを目指すなら、自国に戦略的価値を持たせ、
かつ長期戦に耐えられる兵力を持つ必要がある。
それがないと「蟷螂之斧」という結末にしかならない。
この国は、こういう教訓から何も学ばないのである。ザンネン!

ムクウェゲ(☆☆☆)
2018年にノーベル平和賞を受賞した医師、
デニ・ムクウェゲのドキュメンタリー。
内戦状態にあるコンゴで、「恐怖を植え付けるため」に
レイプされる女性たちを20年以上診察しているお医者さんだそうで、
ところ変わればいろんな物事の意味付けが変わってくるものなのだな、
ということをまず改めて知った。
そういう事情ゆえに、レイプされた後に受ける心の傷の質が、
日本国内とかで報道されたものとは全然違うようなので、
そういう患者さんに寄り添うのは並大抵なことでないことも理解できた。
そんな彼の思想の根底には、
日本で学んだ「利他」の思想がある、というのはまた興味深い。
「もったいない」のワンガリ・マータイも
ノーベル平和賞受賞者(2004)でありアフリカ人である。
チャイナマネーが大量に入り込んでいるが、
一方で雇用をアフリカに落としてないから評判が悪いと言われている。
日本は日本で、働きかけは少ないが学びの機会を提供して、
こういった思想を浸透させているという意味では、
なるほど「日本素晴らしい」と言えるのかも…。

メイド・イン・バングラディシュ(☆☆☆☆)
こういう作品を観ると
「資本主義=マッチョ=男性的」で、
「共産主義=調和的=女性的」と見ることもできるが、
一方でいち早く知識を身に着けた者が
主導的な役割を任じられ、組織内でより高い地位を手に入れる、
という意味では共産主義が組織論的にはいびつというか、
矛盾を内包してることも理解できてしまう
(そういう意味では「寡頭制の鉄則」(ミヘルズ)が
組織論的に強理論だと理解してしまうわけだが…)。
21世紀は、「フェアトレード」と「資本主義」のバランスが
テーマになりそうだが、
一方でデジタル化がさらに進めば「ダイレクトトレード」
に移行しそうなので、やはり資本主義は曲がり角に来ていそうな感じはする。
もちろん、ジェンダーとか官僚主義とか、
他にもテーマが盛り込まれているので、興味深い映画である。

ストーリー・オブ・フィルム(☆☆☆)
ここ10年程の映画の中から、「歴史に残りうる」または「歴史を変えるかも」な
作品をピックアップして紹介するドキュメンタリー。
できれば一つ一つ噛みしめて観直したい作品群ではあるが、
あえて言うと、スタッフ陣が注ぎ込んでいる技術が
あまりこういう視点で透けて見えすぎてしまうのは、
あまりカッコいいことではないような気もする。
もしかしたら、映画製作者が通うような学校で観るようなヤツ?

鬼が笑う(☆☆☆)
日本では、人を殺してはいけない。
なぜなら社会が赦さないから。
なぜ赦されないのか?
それは、「殺人」の事実だけがフレームアップされるからであり、
殺した相手がどんなクソ野郎だろうが関係なくなってしまうからである
(死んだらみんないい人になるのと無関係ではないだろう)。
ラストでは「不法」を糺すために「無法」に走るわけだが、
「無法」使わせる社会の暗部に光が射すことはない。
もう、社会にはそんな余裕もないのかもしれないが…。

東京2020オリンピック SIDE:B(☆☆☆)
オリンピックを取り巻く社会や裏方にフォーカスした、
オリンピックのオフィシャル映画としては、まさに「B面」。
森喜朗に権力が集中し過ぎたのが、
いろいろと起こってしまった原因の一つと見ることができるだろう。
本人も(自称)スポーツマンだったこともあり、
今までのスポーツ界に対する貢献を否定はできないが、
本人が典型的な「体育会系男子」的な思想の持ち主で、
それを止められる人がいなかったことが問題。
開催自治体の長である小池百合子東京都知事も、
今作の監督河瀨直美も、それぞれの業界で
「女を捨てて」のし上がったきらいがあるので、
女性委員の人数を問題視無かったことも問題だし、
組織スタッフの無能ぶりというか、
「本人が好きでやってるんだから、全部森さんにお任せ」
みたいな態度でやってるため、
あまりにもこの仕事が属人的になってしまったことも問題だろう
(この辺りも「寡頭制の鉄則」では問題視してるが…)。
やっぱり、本当の意味で「やる気」が無いんなら、
こういうカネや人がたくさん動くイベントはやらない方が良い。

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